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interview

畑からフードロスをなくし、
「農業はかっこいい」を実現させる!

株式会社エーエスピー 代表取締役社長 林直樹

野菜や果物などの農産物のうち、出荷されずに廃棄されるものは約15.5%にも及ぶといわれている。まだ食べられる未利用農産物に光を当て、加工原料に生まれ変わらせてメーカーへ安定的に販売する。株式会社エーエスピーは、この仕組みを拡大させることで、フードロスの解消そして農業のイメージにも変革を起こそうとしている。

01点をつなげた、新たなプラットフォームづくり

――どういう取り組みですか?
流通の規格に見合わないために出荷されず廃棄せざるを得ない農産物を農家から買い取り、粉末にしたり油分を抽出したりなど加工して、食品原料や化粧品原料、飼料や肥料などとして販売します。エリアごとに複数の農家を束ねて集荷することで供給量のバラつきを平準化し、一定量加工する間の鮮度を保持する技術を取得することで、メーカーに安定した原料供給をすることができるようになります。また、閑散期に稼働していない加工工場を利用することで、工場の稼働率を上げることにもつながります。
――企画が生まれたきっかけを教えてください。
もともと食品メーカーで商品開発の仕事をしていて、その後も自治体の産業振興に携わる機会が多く、生産者や加工会社とのご縁がありました。そういったなかで、8年ほど前、農家と原料メーカーなどをつなぐ、販路開拓のサポートしていたときのことです。少しキズがついたとか、ツヤがないなどの理由で、まだ食べられるのに捨てられる農産物が2割近くもあることを知ったんです。そういった規格外品を、「訳アリ品」「B級品」として販売する方法もありますが、良品の価値が下がってしまう課題もありました。しかし、規格外品を捨てるのではなく、加工して販売すれば、農家にとって収益となりますし、ブランド価値を下げることもありません。

例えば、パプリカ。スーパーにはピカピカでつやつやのものばかりが並んでいますが、少しキズがついたり、ヘタが折れていたりするだけで廃棄の対象に。問題なく食べられるのに捨てられています。大規模農家だと、その廃棄量もすごく多い。粉などに加工すればドレッシングの材料になったり、野菜の機能性成分を利用してドリンクにしてみたり。様々なものに活用できます。
これまで関わってきた生産者や工場、メーカー、それぞれの抱える課題を結び付けると新たな価値が生み出せると気づいたんです。

02生産から流通までを見据えて儲かる仕組みに

――難色を示した生産者はいましたか?
今まで捨てていたもの、つまり収益ゼロだったものがプラスになるわけですから、ネガティブな意見は出ていません。
しかし、例えば畑の横に放置するだけ、あるいは土に戻して肥料として使っていた場合は、新たに「出荷する」という手間が増えるのは確かです。それでも収益がプラスになるなら、と言ってくれるところもあれば、人手が足りないところは、エリアごとにこちらから人員を派遣して集荷に行くなど対応していく予定です。
農家自身が出荷・集荷作業をする場合には、その分上乗せして買い取るなどの仕組みも検討しています。
――生産者の意識も変わりそうですね。
これまで食べ物だと認識していなかった規格外品に、新たな価値を感じてもらえると思います。農産物は加工すればするだけ、価値が上がります。いわば、生産者は一番低いポジションにいるわけですが、その状態を変えたいと思っています。
加工した利益分を生産者にキックバックできるように、最初に売り先を決め、利益のめどを確保してから、農産物を仕入れています。生産、加工、流通といった全体の設計を理解して、コストダウンを考えます。

03農業を時代に合わせて再定義する

――今後の目標は?
現在レモンや柚子などの柑橘類、トマトやパプリカから始めていますが、農産物の種類もエリアも増やしていきたいと思っています。また、耕作放棄地を利用した、新たな作物の栽培などの取り組みもはじまっています。
――その先に描いている未来とは?
フードロスや「規格外」という言葉自体をなくしたい。そうすると、食料自給率があがり、生産者の所得は安定、農業人口の増加につなげていきたいと考えています。
儲かる、という視点だけではなく、農業という職業がリスペクトされるような社会にしたいと思っています。どうすれば、「農業はかっこいい」のか。
昨今、SDGsやサステナビリティが叫ばれるようになっていますが、農業自体、あるいはかつての日本の生活スタイルこそが、そもそもサステナブル。「無駄なく全て使う」という精神がありました。農家の生き方自体がかっこいいんだという情報発信を意識していきたいと思います。
――具体的に、どういう発信方法がありますか?
一つはSNS。もう一つは、実体験です。コロナ禍でテレワークが増え、ストレスが溜まっている都市部の人たちに、地方に行かずとも、都会で農業体験をして発散してもらえる機会を作りたいなと考えています。
作物を無駄なく使う加工の体験や、免疫力を上げる料理を作って食べながら農業体験できる仕組みを大阪万博の頃までに実現できたらいいなと、動き始めています。
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