ナレッジキャピタル超学校
わたしの研究、今、ココです!
研究者は、いつだって道の途中にいます。
めざした目的地は手が届いたと思った瞬間に次の道しるべへと姿を変えまたあらたな目標を彼方に照らしだすからです。
世界を相手に先陣を争う研究もあれば正解のない問いを社会に深く投げかける研究もあります。
まだ誰もみたことのないものをただ見たいという好奇心に駆られた、貧欲であり無心な研究者という生き方を選んだ人たちにどうぞ会いにいらしてください。
青い地球ができるまで ー太陽系年代学入門ー
「ほぼ同じ材料物質」から「ほぼ同じ時期」にできたにもかかわらず、8つの惑星は個性豊かで地球にだけ海があり生命が栄えてきました。
このような特徴は、いつ、どのようにして決定づけられたのでしょうか?
最新の隕石やアポロ月試料の分析からわかってきた太陽系の歴史について解説します。
プロフィール
生まれも育ちも甲子園。1994年大阪大学理学研究科修了(理学博士)。広島大学助手、准教授、教授を経て2012年より大阪大学理学研究科教授。地球型惑星の誕生と進化の「偶然性と必然性」、「普遍性と多様性」に魅せられ、地球や月をはじめとする太陽系の歴史を紐解く「太陽系年代学」を推進。平成23年度文部科学大臣表彰「科学技術賞 研究部門」受賞。
広島大学時代には、「『理が苦』を『理楽』へ」を合い言葉に、広大サイエンスカフェを主催。関西においても科学館や小学校での講演など、市民向けの活動にも尽力する。大阪大学21世紀懐徳堂が企画中の阪大サイエンスカフェ(仮称)にも協力。
食から見た近世東アジアの『大分岐』
東アジア諸国の文化には、共通点の一方で大きな違いがあります。共通点はたとえば、欧米のことにばかり関心を持ち近隣諸国のことを知ろうとしない点。では違いはどんなところにあるでしょうか。食文化を例にとれば、中国やベトナムから外国慣れしていないお客さんが来たら、料理や弁当を出すときに気をつけねばならないことは何か、みなさんご存じですか。そういう身近なところに、国際対立のタネが隠れているかもしれませんよ。
さて、食文化の共通点や違いにも歴史がかかわっています。日本人がふつうにインディカ米を食べていたのをご存じですか。キムチはいつトウガラシ味になったのでしょう。中国料理はなぜ火を通した料理ばかりになったのでしょうか。16~17世紀の「大航海時代」以後におこった、グローバルな交流と人口変動や、「鎖国」を背景とした食の変化を手がかりに、アジアと日本のくらしの歴史をご紹介します。
楽しくて国際理解の役に立つ、本当の歴史教育を味わっていただきましょう。
プロフィール
大阪大学文学研究科教授。横浜出身だが大学入学以降は関西暮らし。京都大学助手、大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)専任講師を経て1991年より大阪大学に勤務、2001年より現職。専門はベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説と歴史教育。幼い頃から食い意地が張っており、特にスイーツをこよなく愛する。
「サルの中にヒトを見る- サルの人間科学」
一緒に食べる、遊ぶ。時にはケンカして、仲直りもする。母が子を抱っこする、おんぶする、そして、叱ることもある。これはあなたのことではありません。サルのことです。社会の中で暮らしているサルたちを見ていると、サルの顔が一頭一頭異なり、見分けることができるようになります。もちろん、母と娘のように顔が似たサルたちもいます。でも、顔の区別ができるようになると、サルも個性豊かな生きもので、ヒトである私たちと近い存在であることが分かります。
「進化の隣人」であるサルを見て楽しみながら、サルの心に触れてください。そうすると、いつの間にか、自分の周りの人や、あるいは自分自身と似ているところがあると感じるでしょう。そうです。サルを見つめていると、ヒトも見えてくるのです。ヒトの本性の理解に近づけるのです。ニホンザルやゴリラの世界にご案内します。遠い、遠い昔に遡れば、ニホンザルとゴリラ、そしてヒトの共通の先祖にたどり着きます。だから、彼らを鏡として、自分を見つめることができるのです。サルの人間科学を一緒に楽しんでください。
プロフィール
1986年大阪大学人間科学研究科修了。大阪大学人間科学部助手、助教授を経て2007年より大阪大学人間科学研究科教授、2014年より人間科学研究科研究科長。専門は霊長類行動学、動物園行動学。著書に「ニホンザルの母と子」「ゴリラの子育て日記」など。
大学教授が起業し、そして儲ける
阪大名誉教授の森嶋通夫先生は「なぜ日本は行き詰ったか」を2004年に出版され、工学博士でジャーナリストの西村吉雄さんは「電子立国は、なぜ凋落したか」を2014年に出版し、阪大医学部出身で三重大の元学長の豊田長康先生は最近の日本の科学論文数の減少を分析して発表されています。たしかに最近の日本は元気がない。
ソニーやホンダ、パナソニックが生まれてきた時代は遠い過去になってしまい、新しい「もの」が生まれない社会になってしまいました。ガラパゴス化とは、一国だけの平和主義の鎖国文化と言えるかもしれません。そんな沈滞ムードを打ち破って、新しい会社や科学を生み出したいですよね。
今回の講演では、なぜ大学教授が起業して儲けようとするのか? なぜ製造業なのか? なぜ大学発なのか、なぜ産学連携でなく中小企業なのか? なぜ阪大なのか? をテーマにお話をし、日本の元気ある未来を創る相談をしたいと思います。
プロフィール
大阪府池田市出身。1979年大阪大学大学院博士課程修了(応用物理専攻)。カリフォルニア大学アーバイン校などを経て1993年より大阪大学工学部物理学科教授(工学研究科応用物理学専攻教授)、2013年より大阪大学特別教授。2003年にナノフォトン株式会社を設立、代表取締役会長を務める他、広く社会に貢献し活躍する人材を育てる科学者維新塾を主催し、若手人材育成にも尽力する。
国際光年と現代物理学(入門編)
今年は国際連合が定めた国際光年です。
なぜ今年が国際光年なのかを、「光の研究」の歴史を振り返りながら易しく解説します。光に対する人間の興味と理解が、物理学の歴史そのものになっていて、現代物理学の柱である量子力学と相対性理論にもつながっています。「数式」が物理学においてどのように使われているかも含めながら、光を通じて、自然界の不思議さと物理学の美しさをお伝えします。
小川教授曰く「中学時代から物理学や数学にのめり込んできました」とのこと。みなさんには、光の物理学の美しさとともに、自らの研究対象にのめり込む研究者の魂と思いを、肌で感じていただけたらと思います。(大阪大学21世紀懐徳堂 中込)
プロフィール
1962年岡山県玉野市生まれ。東京大学工学部卒業以来、東京大学大学院、日本電信電話株式会社、大阪市立大学、東北大学と数々の企業、大学を経て2000年より大阪大学大学院理学研究科教授。故にこれまでの居住地履歴は中国地方から東北地方まで本州をほぼ網羅(?)。2015年8月より大阪大学理事・副学長。
教育を経済学で考える
「競争社会はよくない」と言われますが、競争のない社会より競争のある社会の方が物質的には豊かです。競争の参加者からみると競争はつらいものかもしれません。でも、モノやサービスの買い手にとってみると、売り手が競争してくれる方が、良いモノを安く買えます。競争がない社会になってしまうことのコストは大きいのです。
競争的な社会を維持していくためには、競争に参加する機会が誰にでもあることが大事なのはもちろんですが、努力すれば競争に勝つ可能性が高くなると世の中の人が思えることが重要だそうです。運やコネで人生が決まると思えば、競争社会を維持したいと思えないのです。
競争や協力に対する価値観は、家庭での教育だけではなく、学校教育でも形成されます。日本の小学校教育には、意外にも大きな地域差があるそうです。グループ学習が重視される地域もあれば、小学校の運動会で徒競走に順位をつけない地域もあります。こうした教育を受けた人は、その後、競争をどのように考えるように成長したのでしょうか? 互いを思いやる人に成長したのでしょうか?大竹教授は経済学でこうしたことを明らかにされています。
経済学者の大竹教授が「教育」を研究するのは、豊かな社会を維持していくには、教育の充実、教育への投資が欠かせないからです。教育を経済学の視点から大竹教授がお話します。
大竹教授の経済学的センスは、子供の頃、商売をしていた実家で培われたようです。時間があればお手伝いをさせられていたとのことですが、人前で話すのは嫌いで、商売はやりたくないと思っていたそうです。石油ショックの頃、物価上昇で値札シールを貼り替えた時に、こういうことが事前に予測できたらなあと考えていたのが、今にして思えば、経済に関心を持つきっかけだったかな、とのことです。(大阪大学21世紀懐徳堂 沢村)
プロフィール
1961年京都府生まれ。
京都大学経済学部卒業、大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。大阪大学博士( 経済学)。専門は、労働経済学、行動経済学。大阪大学社会経済研究所助教授を経て、2001年より現職。2013年より大阪大学特別教授。NHK Eテレ「オイコノミア」出演中。近著は『経済学のセンスを磨く』(日経経済新聞出版社)、『競争と公平感』(中央公論新社)。
あなたとロボットの境界線はどこですか
いかに精巧なアンドロイドをつくるか-----。アンドロイドのあまりのインパクトの強さに、そこに心血を注いでいると誤解されがちですが、石黒教授の研究の真の目的は「人間とはなにか」の探求にあります。この哲学的領域に踏み込むため、「たまたま自分がもっていたロボット関連のアドバンテージを活かしているだけ、手段は別にロボットじゃなくてもよかった」とまで石黒教授は言い切ります。人間の能力や存在感を、技術でひとつひとつ機械に置き換えていき、最終的に置き換えられなかったものにこそ、人間を人間たらしめている芯があるはずと、まるで、人間から技術で引き算をしているかのような研究です。
石黒教授によると、人は他人と関わることで、互いに心の存在を実感しあっているのであって、世界に人間が一人しかいなければ、その人におそらく心はないだろうとのことです。
石黒教授の作るロボットには心があるように思えます。機械に心なんかないはずなのに? 心まで機械に置き換えられてしまったということ? 考えてみれば、あなたやわたし、友達や恋人やかわいいペットのワンコにも当たり前に「心がある」と信じられている根拠はどこにあるのでしょう。
ロボットと人間の境界が必ずやあいまいになる近い未来に、ロボットではなく、あなたである必要はなんですか? と尋ねられた時、あなたは答えを用意できているでしょうか。
写真はGeminoidHI-4。「今日はジェミノイドは来ないんですか?」なんて石黒教授に言うたらあきませんよ。ジェミノイドへの講演や取材依頼がぐぐっと増えて、「自分が作った自分そっくりのアンドロイドに、猛烈に嫉妬する」という、人類初のジレンマに陥っている、ああ見えて結構ナイーブな石黒教授なんですからね☆(大阪大学21世紀懐徳堂 沢村)
プロフィール
1963年滋賀県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻教授。
ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。
人間酷似型ロボット研究の第一人者。自身をモデルにした遠隔操作型アンドロイド「ジェミノイドHI-4」は世界中の注目を集めている。2011年大阪文化賞(大阪府・大阪市)受賞。2013年より大阪大学特別教授。