- 2015.07.31
- イタリアの夏、フィレンツェから列車に乗って、いざバカンスへ
6月に入り太陽の日差しが強くなり始めると、夏を待つ間もなく、長期・短期を問わず、海や山で過ごす夏季休暇に人々の心は向かいます。イタリアのバカンス(休暇)シーズンの到来です。イタリアは、その周囲を地中海と美しい海岸線に囲まれた細長い半島。内陸部にはアルプス山脈やドロミテ渓谷の変化に富んだ森林や河川を持つ自然豊かな国です。大都市から車や列車で程遠くない距離に青く澄んだ海や緑豊かな田舎町があり、天気の良い週末をこうした場所で過ごすことは、イタリア人にとって夏の喜びそのものです。有名な避暑地や人知れない穴場の海岸など、それぞれのライフスタイルに合わせて、皆お気に入りの場所があるようです。私のように自家用車を持たない人や、海外からの旅行者でも公共交通機関を利用して夏のリゾートを満喫することができます。シチリアやサルデーニャなどの島へ渡るには高速船や飛行機ですが、本数がごく少ない遠隔地を除けば、列車はやはり利便性が高く、国内旅行では一般的な交通手段です。地元の駅から目的地までゆっくりと車窓の風景が変わっていくのも心楽しい時間。海辺や緑の渓谷、広大なひまわり畑など、イタリアならではの風景を楽しむことが出来ます。フィレンツェから行ける代表的な観光地は、北の山側では、ユネスコ世界遺産に登録されているドロミテ渓谷のある北部3州のボルツァーノ、高速列車で3時間半です。南の海側では、チンクエテッレやリグーリア海岸沿いの街々。ここは世界遺産で有名になった、可愛らしい古い漁師町と入り江が続く場所です。列車で約3時間、バスや観光船を利用すると、様々な入り江や島に行く事ができます。高速列車を使えば、ナポリやサレルノがある南イタリアまで2時間半と、行動範囲も広がります。山側・海側に係らず、フィレンツェの北と南を結ぶ列車の主要路線は変化に富んでいます。 6月末、私も列車で都会の雑踏を抜け出し、新鮮な空気とあふれる緑の中でバカンスを過ごして来ました。目的地は、北イタリアベネト州の山々と澄んだ河に囲まれた街フェルトレにある僧院*1。12世紀、聖人ビットーレと聖女コロナに捧げるため、街を見下ろす山の頂に、この僧院は建てられました。小さく美しい僧院は、音楽や古典文化を守る拠点としても活用され、オルガンコンサートや中世文化の本格的なセミナーが開かれています。今回は、ここで以前から興味のあった”西洋ミニアチュール絵画とカリグラフィー(細密画と古典文字)” の3日間セミナー*2に参加しました。日本でいえば、写経とその挿絵の模写体験といったところでしょうか。フェルトレの街に流れる清水の河辺で涼を取り、いざ山頂の聖地へ。辿り着いた僧院で門が開けられた瞬間、その圧倒的な静けさと時が止まったような回廊に息を呑んでしまいました。これは、碧い海辺の開放感とは対照的に、隔絶された場所だけが持つ静の力を強く感じさせられる貴重な体験でした。そして、緑深い山と澄んだ河に囲まれた自然にふれながら、歴史ある僧院の中での宿泊やセミナーで知り合った人々との交流は、短いながら心に刻まれるバカンスとなりました。*1僧院の正式名称は、Basilica Santuario Dei Ss. Vittore e Coronaです。 イタリア語でよろしければ、http://www.santivittoreecorona.it/storia.htmlをご参照ください。*2ご興味ある方は、以下をご覧ください。こちらは、イタリア語と英語です。 http://www.agakossowska.com/A03.html http://www.agakossowska.com/GB_officina_scriptoria.html