新年のお祝いは大晦日のかなり前から始まり、家族総出で祝宴の準備を行います。家をきれいに掃除し、ヨールカ(ёлка)と呼ばれる美しく飾り付けた新年のツリーなどで室内を装飾します。子どもたちは工夫を凝らしながらツリーにオーナメントを吊るすのを楽しみ、大人たちは新年のご馳走になる伝統料理の準備に精を出します。
プレゼントの買い出しも楽しみにされている恒例行事のひとつです。親戚や友人たちへの心のこもったプレゼントを選ぶのに子どもを同伴させる親が多いのは、与えることと感謝の気持ちの大切さを教えるのに絶好の機会だから。ツリーの周りでプレゼントをラッピングするなんとも楽しいひとときは、多くの家庭で大切にされています。
キルギスにおける新年のお祝いの主役は、なんといっても数々のご馳走です。プロフ(ボリューム満点のピラフ)やマンティ(蒸し餃子)、様々なサラダや人気メニューのオリビエ(ポテトサラダ)などの伝統料理がずらりと並んだ豪華なテーブルを家族みんなで囲みます。さらにはデザートや果物、炭酸飲料も登場し、祝祭の宴に花を添えます。
料理を楽しむだけでなく、祝宴は家族と語らい、笑い、思い出を分かち合う場でもあります。祖父母がこの1年の思い出を、両親が将来の願いを、そして子どもたちが夢を語ることで、家族の一体感と帰属意識が生まれます。
大晦日の夜、時計の針が真夜中近くになると、家族みんなでテレビの前に集まって大統領の新年の演説を視聴します。この演説は、キルギス国家の団結を象徴する伝統行事です。その後、新年へのカウントダウンが始まり、時計の針が12時を指すと乾杯と共に「ジャング ジュルグズダル メネン(Жаңы жылыңыздар менен、あけましておめでとう)!」の声が家中に響き渡ります。
夜空に花火が打ち上がり、色とりどりの花火を見ようと多くの人が外に出て、隣人と一緒に新年を祝います。暖かい服をしっかり着込んだ子どもたちが花火に見入っている間、大人たちは温かい抱擁を交わし、新しい1年の互いの健康と幸福、成功を祈ります。
子どもたちにとって、大晦日は特別な夜です。新年のプレゼントを運ぶジェド・マロース(Ded Moroz、厳寒おじいさん)とその孫娘スネグーラチカ(Snegurochka、雪娘)は、新年の休暇に欠かせない存在で、新年のツリーの下にプレゼントを置く習慣は今も多くの家庭で行われています。元日の朝、子どもたちはワクワクしながらプレゼントを開けますが、これはいつまでも忘れられない思い出になります。
休暇前には学校やコミュニティセンターでヨールカパーティーが開かれ、美しく飾られたツリーの周りで子どもたちが歌やダンス、寸劇を披露します。家族みんなで参加できるこうしたイベントは、子どもたちにスポットライトを当てる絶好の機会となっています。
新年の休暇は家族で1年を振り返る時間でもあります。キルギス人家庭の多くがこの休暇中に1年間に達成したことや挑戦したこと、学んだことについて話し合う機会を設けます。この風習は将来のゴールや目標を設定する助けとなり、困難に負けず成長を続けることの重要性を再確認するにも最適です。
親は子どもたちに新年の望みや願いを書き留めておくよう促します。これは、物事をポジティブに捉える力と目的意識を育むためです。
キルギスの新年のお祝いが特別な時間になっているのは、みんなが集うことが特に大切だとされているからです。目まぐるしく変化する世界において、新年の休暇は足を止めて愛する人との繋がりを持ち、共通の伝統を称え、新しい思い出を作るための特別なひとときなのです。新年が人々にとって特別で大切な祝祭となっているのは、心温まる家族団らんと同じ体験を共有する喜びがあるからです。
キルギス人にとって、新年は単なる祝日ではありません。愛や感謝、未来への希望を祝う時間なのです。ツリーを飾り付けたり、お祝いのご馳走を楽しんだり、互いの願いを語り合ったりと、この祝日では誰もが家族の大切さを再確認します。新しい1年が始まると、キルギスの人々はこの特別なひとときの温かい思い出と家族の強い繋がりを胸に前へと進んでいくのです。