• 2026.02.10
  • ロンドン、新たな未来に向かって
世界最大規模の再開発が進むバターシー発電所は、テムズ川を一望できる、巨大な文化・商業の拠点へと生まれ変わりました。
かつて火力発電所が稼働していたこの場所には、今では100を超えるショップやレストランが軒を連ね、美しく整備された川沿いの遊歩道エリアや、創造性あふれる空間が訪れる人々を楽しませています。
今回ご紹介するのは、ロンドン中心部から少し離れた、テムズ川南岸に広がるエリアです。
白い煙突が印象的な巨大なレンガ造りの発電所は、1980年代に事実上、操業を停止し、以後は放置されたように佇んでいました。
残されたのは、かつてロンドン広域に電力を供給していた石炭火力発電所としての歴史の記憶と、そして何より、この象徴的な存在感を放つ建造物だけでした。
ご存じの方や覚えておられる方もいらっしゃると思いますが、この有名な発電所は、ピンク・フロイドのアルバム「アニマルズ」(Animals)のジャケット写真に使用されことでも知られています。煙突の間に巨大な豚が浮かぶ画像は、アルバムの冒頭と最後を飾る楽曲「翼を持った豚」(“Pigs on the Wing”)を彷彿させる見事な演出です。
同アルバムのリリース以降、この豚はピンク・フロイドを象徴する存在となり、ライブにも度々登場しました。近年開催されたロジャー・ウォーターズのコンサートでも定番のアイコンとして使用されていたという話まであります。
現在、およそ19万平方メートルに及ぶ敷地は、総額約90億ポンドの大規模再開発プロジェクトの中核エリアとなっています。ロンドン史上でも屈指の高額な再開発計画とされています。
この巨大プロジェクトの工事は2013年に始まり、7つの建設フェーズが2025年にすべて完了しました(フェーズごとに異なる建築事務所に委託)。
再開発プロジェクトには、約4,000戸の新規住宅(マンション、別荘、ペントハウス含む)をはじめ、250を超えるショップやホテル、バー、レストランの建設のほか、テラスや公園、レジャー施設、オフィス、7ヘクタールにわたる公共スペースの整備などが含まれていました。
つまり、この街の中に未来の街が誕生しつつあるというわけです。
今後、このエリアは間違いなく、国内外のセレブに非常に人気のある住宅街になるでしょう。実際、歌手のスティングがこの地に最初に住宅を購入した一人だそうですし、アップルも2023年に英国本部をこの地に移転しています。
さらに、環境・経済・社会の各側面における持続可能性に関する厳格な原則に基づいた、ゼロ・カーボン地区へと生まれ変わります。
プロジェクトの基盤となるエネルギー戦略により、電力消費量が大幅に削減され、再生可能エネルギー資源の活用が積極的に推進されていくでしょう。
発電所の操業当時からそびえ立つ煙突が現存していることは、この地区の新たな姿を象徴するのみならず、歴史を守りながら革新と持続可能性を追求し続けるロンドンの姿勢も表しています。
近年、ロンドンでは、特にバターシー発電所を抱えるナイン・エルムズ地区や中心部など、テムズ川沿いの遊歩道の再整備も進んでいます。
川沿いの景色を楽しみながら散策したり、気候の良い季節にサイクリングしたりするのにもぴったりのルートが作られています。

このほか、ロンドンでは「カムデン・ハイライン」(Camden Highline)と呼ばれる別プロジェクトも進行中で、2027年以降にオープンする予定です。
細長い線状の敷地に公園を整備する計画で、モデルとなっているのはニューヨークのハイライン・パーク。ハドソン川沿いを南北に走っていた高架鉄道の廃線跡を利用した公園です。
ロンドン市当局は、カムデン・タウンとキングズ・クロス間の廃線区間を新たに公共の緑地に転換する計画の第一段階として、まずは全3区間のうちの1区間についてゴーサインを出しました。
ニューヨークのハイラインと同様に、ロンドンのプロジェクトでも、高架の廃線区間を活用して誰もが楽しめる空中庭園のような空間を作り出すことを目指しています。
パリでは同様の取り組みがすでに行われており、ロンドンもこうした環境に配慮した革新的な潮流に続こうとしています。

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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