最近、最も姿を変えつつあるベルリンの地区に、シティ・ヴェストがあります。
シティ・ヴェストは、ベルリン動物園とクアフュルステンダム通り周辺の一帯で、戦前はノイア・ヴェステン(新しい西区)と呼ばれていました。クアフュルステンダム通りというのは、元は選帝侯の乗馬道でしたが、19世紀末にパリのシャンゼリゼ通りをモデルに道幅が拡張された大通りです。ベルリンに隣接していたシャルロッテンブルク地区は、元々は裕福な居住区でしたが、ベルリンで最も古い地下鉄によってツォー(動物園)駅と繋げられてからは、商業街として発展し始めます。その頃からノイア・ヴェステンは、ベルリン東部にあった中心地に対する、新しい西部の中心地となり、1920年の大ベルリン計画でベルリン市に編入されます。ワイマール共和国時代のノイア・ヴェステンはポツダム広場とともに、20年代の歓楽街として栄えていました。今の姿からは想像もつきませんが、当時は劇場や映画館、ミュージックホールや喫茶店が並び、特にロマーニッシェス・カフェ(Romanisches Café)という喫茶店は、芸術家や文壇人の間で流行り、ベルトルト・ブレヒトやマックス・リーバーマン、ビリー・ワイルダーまで、各界著名人の交流の場となりました。
しかし、この国際色豊かな地区は、ユダヤ人の占有率が高く、ナチ時代には凋落することになります。そして戦後の分断時代には、東ドイツにある西ベルリンの中心という重要な意味を持つ様になります。シティ・ウェストは“鉄のカーテン”の後ろで世界への窓として、消費志向的で豊かな西側を見せ付けるべく、西ドイツの資金が投入されました。ロマーニッシェス・カフェの跡地に、ニューヨークのロックフェラー・センターを模したヨーロッパ・センターが建ちました。屋根の上にはベンツ社のエンブレムであるスリー・ポインテッド・スターが、東側からも見えるように設置され、資本主義のシンボルとなりました。
今年50周年を迎えるヨーロッパ・センター
東西統一後の数年、その意義を失っていたシティ・ヴェストですが、ここ数年の再開発で動物園周辺エリアや100年近い歴史を持つ映画館 Zoopalastと、それに隣接し動物園と背中合わせのベキニハウスが改築され生まれ変わりました。
ベルリンの若いクリエイティブなデザイナーを集めるベキニ・ベルリン
1957年~1999年まで歴史あるベルリン映画祭が挙行されている。2013に再開された。
現在建設中のアッパー・ヴェストというビルは、完成後は高さ118mに達する予定で、隣接するツォー・フェンスター(動物園への窓)と共にベルリンで最も高いビルのひとつとなります。
Zoofenster とUpperWestの工事現場
観光客が土産を買うばかりの場所は、ここ数年の再開発を経て高級感を残しながらも革新的で、買い物意外にも色々な楽しみを発見できる街になっています。その歴史を眺めた上で訪れれば、更なる発見があるでしょう。