年末年始営業のご案内
12月31日(火):18:00終了
2025年1月1日(水):全館休業
※各店舗の年末年始の営業についてはフロアガイドよりご覧下さい。

  • 2016.03.01
  • ベルリンの路上生活者
今年の冬、ベルリンとしては、それほど寒くなかったとはいえ、朝早く仕事へ向かうとき、地下道や橋の下、店舗の入り口部分など、あちらこちらにある寝袋が気に掛かります。

私の乗る通勤電車の高架線下に暮らすリヒャルドさんは、寄付よりも暖かいコーヒーが嬉しいと言います。この寒さでちゃんと眠れないですが、時間が早く経つように、頭が完全に隠れるまで寝袋を上に引き上げた状態にしています。その後、施しのために人通りのあるパン屋の目の前へ移動します。学校の先生として働いていた彼は文学に興味があって、暗くなるまで誰かにもらった小説の本を読んでいます。

ベルリンのホームレスには珍しくないこととして、アルコールの問題があります。失業、借金、離婚、DVから逃れる為、肉体的・精神的な病気、住宅供給の不足からくる家賃の値上げなど、ホームレスになる理由は様々です。でもその誰もがそれぞれに人生の物語があります。ドイツでは社会奉仕のネットワークが発達していますが、宿泊施設が少なすぎて、路上や公園に寝泊りする人もいます。夜の寒さから逃れ、銀行のATMコーナーで過ごす人が、お金を引き出すために入ってくるお客さんのためにドアを開けている姿をよく目にします。

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特に小さい町と比べてベルリンのような大都市では、ケルテヒルフェ(Kältehilfe)をはじめとして、様々な支援策があります。ケルテヒルフェは寒い時期にケルテブスと言う小さなバスを使い、冬に外で暮らさなければならない人たちの面倒を見ています。場合によっては暖かい紅茶か寝袋を渡すだけですが、必要に応じて自分自身の力で施設へ行くことが出来なくなってしまった人を、緊急宿泊所まで連れて行きます。通行人など誰もがこのバスを迎えに呼ぶことができ、弱った人が道で凍死することを防ぎます。

多くのヨーロッパの国と違い、ドイツではホームレスに関する統計が無く、現在ホームレスが何人居るかは分かりません。ある路上生活者のための支援団体の推定によると、2014年に約33万5000人が住居を持たず、うち完全に路上で暮らす人は39000人程だったということです。更には、この数は増加し続けると考えられています。仕事と良い生活の夢を見て他のヨーロッパの国から来て、結局路上生活するようになる人が増えつつあることに加え、住宅不足の深刻化もホームレス増加の理由になっています。

024_160226_2 橋の下の寝場所

024_160226_3 地下道で寝ている人

ただ、宿泊施設を利用しながら自分の状況を改善しようと努力する人たちもたくさんいます。電車に乗っていると、モッツやシュトラッセンフェーガーというホームレスの新聞を売る人がよく乗ってきます。

024_160226_4 売り手がシュトラッセンフェーガー 新聞をもらえる所

売り手は販売価格1.50ユーロの内90セントを、賃金として受け取ることができます。残りの60セントは支援プロジェクトに使われます。新聞記事はホームレスの状況に関する内容のみという訳ではないですが、この新聞を読んで、売り手とちょっと話すと、ベルリンのホームレスの生活を少し理解することが出来るようになります。

冬の街では、社会的格差がよりはっきりと目に見える形で現れてきます。同時に、この季節は、普段以上の気遣いが必要でもあります。



特派員

  • マーラ・ グローナー
  • 職業リサーチャー、ツアーガイド

出身は南ドイツですが, 10年程ベルリンに住んでいます。ツアーガイドとしても働いています。ベルリンというダイナミックな街で生活していると、新しい発見が尽きません。

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