• 2017.04.28
  • ミシガン州の食べ物のこと
ミシガン州では相変わらず天候の変動が激しく、私の周りでは気温の変化についてゆけず風邪を引く人が続出しています。春のような素晴らしい好天の到来に喜んだのも束の間、ミシガン州はまだまだ寒い日々から解放されません。でも、悪いことばかりではありません。今回のブログでは、ミシガン州の寒冷な気候と相性のよい、風味も栄養も豊かな食べ物についてご紹介します。気候と食べ物との関わりだけでなく、この土地の歴史も垣間見ていただけると思います。

まずはコニー・アイランド・ホット・ドッグのお話から始めましょう。その名のせいか、ニューヨーク生まれだと思い込んでいる人もいるようですが、ホット・ドッグ発祥の地はミシガン州なのです。コニー・ドッグは牛肉と柔らかいバンズを使ったホット・ドッグで、ビーンズ抜きのチリ・ソース、イエロー・マスタード、みじん切りのタマネギをトッピングするというもの。私自身は大のホット・ドッグ好きではありませんが、このコニー・ドッグは、かなりイケると思っています!

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コニー・アイランド・ホット・ドッグが生まれたのは、1920年代初頭のこと。当時、目覚ましい成長の途上にあった自動車産業に従事していた労働者たちに愛され、あっという間に人気の食べ物になりました。様々な情報によれば、デトロイトに来て小商いとしてのホット・ドッグ屋に目を付けたのは、ほとんどがギリシアからの移民だったようです。自動車産業が落ち込み始めてからもたくましく生き延びたコニー・アイランド・ホット・ドッグの店舗は、今でもデトロイト(およびその周辺地域)の名物になっています。私も太鼓判を押せる味なので、もしもこの街に行くことがあれば、街中で見かけるホット・ドッグを是非ともお試しあれ。お値段もせいぜい1~2ドル程度です。

2番目にご紹介するのは、ミシガン・パスティです。これは、アッパー半島のご当地グルメ的な位置づけにあるもので(カリュメット市ではなんと、パスティ祭りが毎年開催されます!)、これを売る店はミシガン州のあちこちにあります。パスティは、伝統的なレシピに基づいて牛肉、ジャガイモ、玉ねぎの詰め物をした塩味のパイです。1800年代にイギリスのコーンウォールからミシガンの北方に移り住んだ炭鉱夫たちが、イギリス式のパイを持ち込んだのがパスティの起源だと言われています。手頃なサイズで、昼食用に持ち歩きがしやすかったのです。炭鉱夫たちは自分のパイをシャベルに乗せ、ロウソクの火にかざして温め直していたのですね!レシピの内容は時代とともに一部変わりましたが、コニー・ホット・ドッグの場合と同じく斜陽産業の憂き目を乗り越えたパスティは、今もなお、この地のローカル・フードとして愛され続けています。

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最後に登場するのはデトロイト・スクエア・ピザです。私が過去に食べた中で最高の部類にランクインするこのピザは、地元でも断トツの存在です。形なんてどうでも味に変わりはないだろうと思われるかもしれませんが、深めのパイ皿で焼き上げたこのピザは、とてもクリスピーで味わい深い生地が楽しめるのです。言うまでもなく、もともとイタリア生まれのピザは、お国柄によって味も全然別もののようになりますが(日本なら餅とチーズのピザがあったりして?)、デトロイトはおいしいスピンオフ版のピザを生み出しました。1940年代、バーのオーナー夫妻によって考案されたスクエア・ピザは、それ以来脈々と受け継がれてきたのです。

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今回ご紹介したのはご覧のとおり、いわゆる洗練された料理でなく、移動中とか、お腹がペコペコで何か食べたいというような場面で出番となる食べ物ばかりです。そうは言っても、気安く捨て置けるような存在ではありません。なぜならこれらの食べ物は、移民の国であるアメリカで米国民が背負ってきた遺産や、発展と成長の様々な場面の中で彼らが果たしてきた役割などを物語っているからです。日本人の多くがそうであるように、あなたも食に好奇心旺盛なタイプなら、アメリカの地域ごとに特有の料理をぜひとも味わって、その歴史にまつわる話を聞き出してみて下さい。興味深い物語が、そこにはあるはずです。

特派員

  • マルタ・ ヒッキー
  • 職業教師、イラストレーター

マルタは生まれも育ちもアムステルダムですが、日本語と日本文化の研究の一環で2年半の日本在住経験があります。オランダ人と日本人の間の文化とコミュニケーションのつながりについて、特に強い関心を持っています。現在はミシガン州ノバイに拠点を移し、文化の違いをより広く探究しようとしています。

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