タコスは日本のおにぎりのように種類が豊富な国民食なのですが、その中でも定番のタコス・アル・パストール(Tacos Al Pastor)を紹介したいと思います。
日本でよく見かけるタコスはひき肉やトマト、レタスを挟みチーズがかかっているものがほとんどです。これはアメリカ経由で日本に伝わったアメリカ式タコスのため、メキシコではほぼ見かけることはありません。
タコス・アル・パストールはアチョーテという食紅、辛くないチレ、にんにくなどで作ったスパイス液で豚肉をマリネし、それを串に刺し大きなかたまりにして回転させながら焼きます。そしてその豚肉をナイフでそぎ落としトウモロコシでできたトルティーヤにのせタコスの具にします。豚肉と一緒にパイナップルも焼いていて、それも豚肉の上にのせてくれます。このトルティーヤ、日本のタコスのイメージと比べると小さめで手のひらサイズなのでぺろっと3つ4つは食べてしまいます。ただし実はトルティーヤを2枚重ねにしているお店も多いため食べすぎには要注意かもしれません。
初めて見た時トルコのケバブみたいだと思ったのですが、それもそのはず、このタコスはレバノンからの移民が考えたアラブ風タコスなんです。パストールが生まれた説はいくつかあるようですが、有力なのが1960年代にプエブラ州に住み始めたレバノン系移民がケバブにヒントを得て、ピタパンの代わりにトルティーヤに具材を挟んで食べたという説。ただ、このタコスを初めに作ったのはプエブラが先か、メキシコシティが先かでずっと論争が続いているんだそうです。そのためこのタコスはメキシコ全土で食べることができますが、特にメキシコシティにはパストールが美味しいお店が多いと言われています。
パストールはお好みで刻んだ玉ねぎとシラントロ(パクチー)をのせて、リモン(ライム)を絞っていただきます。
お店によっては小さな玉ねぎをソテーしたものや、ノパル(ウチワサボテン)をつけてくれるところもあります。
ノパルものせたパストール
パストールは酸味と甘みもあり、日本人の口に合うタコスだと思います。日本では食べるのが難しいので、メキシコを訪れた際は絶対に食べてほしいタコスです。
パストールの豚肉を焼く機械はトロンポと呼ばれ、ほとんどの場合外から見て分かる場所に設置されています。たまにメニューにパストールがあるのにトロンポがないお店があります。この場合、見た目は似ていても味が違っていていまいちなことが多いので、ぜひパストールを食べる際はトロンポのあるお店、できれば人で賑わっているお店がおすすめです。