病院に着いたのは朝8時前、まだ患者を各部署へ振り分ける管理部が開いていません。仕方なく入口にいたセキュリティのおじさんに陣痛が来ている旨を伝えると、このおじさんがとても優しくて、「陣痛来てるの?出血ある?大丈夫?」「もうすぐ担当者が来るからもう少し待ってね」「大丈夫、大丈夫」とこまめに私が座っていた場所まで来ては頭や肩をなでて宥めてくれ、最後は勤務時間が終わったらしく「僕はもう出るけど、他の人が呼んでくれるからね、頑張ってね!」と言ってくださいました。今思えば海外らしいエピソードですが、当時は痛みと不安で震えていたので泣けました。笑
それから、管理部の人に個人情報など確認されて、出産を行う部署へ移動。まだ子宮口が開いていなかったので病室に移されてそこでひたすら陣痛と闘うことになりました。最初に陣痛が始まってからおおよそ24時間、痛みが強くなってきたと助産師さんに伝えると再度子宮口を確認され、分娩室へ行けると言われた時は本当に救われた思いでした。
さて、こちらでは子宮口が1㎝でも開くと、痛み止めの麻酔を打つことができます。助産師さんの話では60-70%の妊婦さんが無痛分娩を選択するということです。日本での出産を考えると麻酔なしで出産される方が大半なので、「私だってできるはずだ」と息巻いていましたが、長時間押しては返す陣痛と徐々に強くなる痛みに心が折れて麻酔をお願いしました。最も痛くて辛いであろう部分を心穏やかに過ごせたので、結果的には選んでとても良かったと思います!麻酔なしで出産されたお母さん方、心底尊敬します…あれ以上痛くなるとしたら、どうやって耐えれば良かったのか正直想像できません。
何とも言えない顔をしているBefore(陣痛中)。笑
もう子宮口開いてきているのにこんなに余裕のAfter。
そして、この麻酔はこちらの産後の入院システムにも関係します。まず、産まれたてホヤホヤの赤ちゃんはお母さんのベッドの横に寝かせられます。つまり、泣いた時にあやしたり、オムツを交換したり、その瞬間から自分でしなければならないんですね。そして、Privateではないので相部屋です。誰かの赤ちゃんが泣くと他の赤ちゃんも起こされて泣いてしまいます。自分の子が泣き止まない時の焦りったらありません。結果、前日も繰り返す陣痛で一睡もできていなかったのに1日目の夜もほとんど眠れず…。加えて、Publicで無料だから仕方がないと言えばそれまでなのですが、なんと入院期間は2泊3日(帝王切開は4-5泊だそうな)。うちは夜10時過ぎに産まれたので、その日の夜からカウントされて産後2日目に退院でした。もしも麻酔なしで出産していたら…もっと体力を消耗しただろうし、夜通し泣いている我が子の面倒を一人で見るなんてできなかったかもしれません。
病院にいる間も患者数が多いため助産師さんがバタバタしていてなかなか密に面倒を見てもらえない状況でしたが、病院側に悪意があるわけでは決してありません。帰宅した次の日から病院所属の助産師さんたちが毎日家に来て、赤ちゃんと私の血圧や体温、その他諸々体調の確認をしてくれました。さらには、地域を担当する看護師さんも来て、家の近くにあるコミュニティを紹介してくれたり、何か不安があればとても親切に相談に乗ってくれます。まだまだ始まったばかりの子育てで分からないことばかりですが、サポート体制は思いのほか整っているようです。
私が日本で出産を経験したことがないのですべて比較できたわけではないと思いますが、日本の友達からよく聞かれることを中心に書いてみました。海外の出産事情を少しでも楽しくお伝えできていたら幸いです。