• 2018.04.24
  • イースターパン
日本で桜が咲き始める頃、こちらではイースター休みがあります。
卵の形をしたチョコレートや卵をイメージしたカラフルな砂糖菓子が出始め、店頭を賑やかにしてくれます。
この他に、ポルトガルには、フォラール(Folar)という伝統的なパンを良く見るようになります。このパンの材料は、小麦、塩、卵、水という非常にシンプルなもので、地域によって多少の差はあるものの、共通しているのは、茹でた卵が殻付きのまま埋め込まれている事です。


このフォラールというパンは、「友情」と「和解」という意味が込められており、その由来になった一つの伝説が残っています。

ポルトガルのどこかの村にマリアーナという若い娘が暮らしておりました。彼女の唯一の願いは、早く結婚する事でした。彼女は、聖カタリーナにその意思を伝えるべく、毎日にように祈りました。すると願いは叶い、彼女に気を寄せる2人の男性が現れました。1人は裕福な紳士。もう1人は貧しい農夫です。
すると今度は、正しい男性を選ぶアドバイスを求めてマリアーナは、また聖カタリーナに祈りました。熱心に祈っている最中、どなたか扉を叩く者がいます。それは、求婚の返事を聞きにやってきたアマーロ(貧しい農夫)でした。マリアーナは、答えることが出来ず、アマーロはイースターの日曜日まで返事を待つ事にします。
とうとうその日曜日がやってきました。マリアーナの元に大慌ての隣人がやって来て、紳士と農夫がマリアーナの家に向かっている途中遭遇し、死闘を繰り広げている事を伝えます。驚いたマリアーナは、2人が向い立つ現場に向かい、貧しい農夫であるアマーロの名前を叫びます。
イースター日曜日の夜、マリアーナは、アマーロが結婚式に現れた紳士によって殺されるという噂を聞き脅えます。そこでまた聖カタリーナを頼ります。その時、聖カタリーナは、マリアーナの祈りを聞いて、微笑んだと言われます。
翌日マリアーナは、聖カタリーナの祭壇に花を飾りに行きます。家に戻ると、殻付きゆで卵が埋まったケーキが花と一緒にテーブルの上に置かれていました。花は彼女が祭壇に置いてきたものと同じ事に気づき、急いで家を出てアマーロの家へ向かいました。その途中でアマーロに遭遇し、アマーロの元にも同じケーキがテーブルの上にあった事を言われます。
2人は考えた末、きっと紳士からの贈り物だと考え、彼の家にお礼を言いに行くことにするのですが、なんと彼の元にも同じケーキが届けられているのを知り大驚き!
マリアーナは、これは全て聖カタリーナの仕業であると確信するのでした。


こちらの伝統では、イースターの日曜日(Domingo de Ramos/Palm Sunday)になると代子(Godson洗礼時の名付け子)が代母(Godmother洗礼時の名付け親)にすみれの花を贈り、それに対して代母は、代子にこのフォラールを渡す風習があるのです。

私たちは、キリスト教徒でないので、そうした習慣はありませんが、子供たちが楽しみにしているエッグハントは毎年行います。これはあらかじめ隠しておいた卵(大体が卵型のチョコレート等)を子供達が探すといった遊びです。上の子は、お菓子を食べない子ですが、庭に隠された卵(お菓子)を猛スピードでほとんど奪ってしまいます。お菓子が大好物の下の子は、なかなか見つけられず、お姉ちゃんと大差をつけられ半泣きで終わる・・・これも我が家では恒例の出来事なのです。


特派員

  • 太田めぐみ
  • 職業修復士、通訳、コーディネーター/Insitu(修復)、Kaminari-sama、ノバジカ、他

ポルトガル在住の保存修復士。主に、絵画(壁画)や金箔装飾を専門にし、ユネスコ世界遺産建築物や大統領邸の内部を手がける。シルバーコースト近くの村で、地域に根付いた田舎暮らしを満喫している。趣味は、土いじり。

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