南アフリカの科学者たちは新型コロナウイルスの変異株を検出し、11月24日にWHOに報告。
オミクロン株と名付けられたこの変異ウイルスを、隠すことなく速やかに発表した南アフリカは、この行いを賞賛されるどころか罰せられる結果になった。
なぜならこの数日後、南アフリカを含むアフリカ南部の国々は、欧州諸国にシャットアウトされてしまう。
ヨーロッパがマプートへの往復便を禁止した日(11月27日)、モザンビークでのCOVID-19の新たな感染者は5名。入院者はゼロ、死亡者もゼロであった。
他のアフリカ南部の状況はほぼ同じであったのと対照的に、ヨーロッパでは感染者拡大によるロックダウンを実施する国があるほどだった。
その約1週間後、マプートで研究中であった主人がやっとの思いでリスボンに帰還した日は、モザンビークでのオミクロン株感染者は7名に対し、ポルトガルでは既に20名弱の感染者が報告されていた。
オミクロン株が南アフリカで発生したというだけで、アフリカ南部は速攻で欧州に見捨てられてしまう。
確かにアフリカの多くの国々では、医療の恩恵を受けられる人口が低く、病気を抑えるために不可欠な免疫が損なわれている人々が高い割合で存在する。ヨーロッパがブースターや4回目のワクチン投与について話しあっているのに、アフリカ人の多くはたった1回のワクチン投与の恩恵も受けていない。そんなところに新型コロナウイルスの中でも、感染力の強い変異株が発生すれば、感染者増加は瞬く間に起きるだろう。
しかし、それを恐れてアフリカ諸国を閉鎖すれば、社会や経済の進歩も閉ざされ、貧困を悪化させ、さらに溝が深まるのは当然だ。そもそも、アフリカ諸国を差別し、このような結果を生み出したのは、他の豊かな国々ではないか? 高い金額でワクチンを売りつけ、代金を受け取ったにも関わらず、裕福な国への配布を優先させる。
ヨーロッパは基本的な科学原理を見失っているのではないか。オミクロン株の地理的起源や危険性など、何の証拠もないまま壁を築いた。科学ではなく、幻想から身を守るために。
またしても科学は政治の犠牲になった。
貧しい人々への不十分な医療、不平等なワクチンの分布、その結果としての突然変異が世界を脅かしていることは、豊かな先進国の利己主義に帰しているのではないだろうか。
- 2022.01.07
- 犠牲になる科学