訳して「水の端」というこの冊子は、天文学と宗教的データに基づいた、生活の知恵を示したものである。
毎年発行されていて、初刊からすでに93年目になる。
表紙は、普通の年間カレンダー。その裏は、ポルトガルの国旗の説明、各月の誕生石と説明、そして国民の休日が載っていて、その次のページから、この冊子のメイン部分が始まる。
1月から12月まで1ページずつ、その月に関することや、この月にやるべきことが書かれている。
その内容は、こんな。
・月の初日と最終日の日の出、日の入り
・1ヶ月で日がどれだけ延びたか
・その月に関連した格言
・満月、新月、上弦の月、下弦の月がいつか
・休日がいつか
・それぞれ宗教的になんの日か
・それぞれの日に生まれた有名人
・オラクル(占い)
・農業やガーデンニングの知恵
12月まで行くと、今度はこの順番でページが進む。
・15ページ:満月・新月・上弦の月・下弦の月の日時、潮の満ち引き、季節の変わり目の日時、宗教上の省略文字
・16ページ:星座と月の関係のカレンダー
・17ページ:〇〇〇〇年の月食、日食の内容
・18、19ページ:〇〇〇〇年の惑星の可視性(いつ、どの辺で見えて、どの惑星と交差するか等)
・20、22ページ:年間の祭日、祝日など
・23ページ:市場が開催される場所と日にち
・裏表紙:1年間の占星術的見解(どの惑星がどこに位置するか)
私は実は、宗教にも星占いにも全く興味はない。なのになぜこの冊子を毎年購入しているかと言うと、各月の農業、ガーデニングアドバイスが便利だからである。
例えば、10月の部分を読んでみると、、、
「オリーブの収穫を開始する。穀物を蒔く。苗床では、アーモンドと桃の種を植える。乾燥していて保護された土地にはオリーブの木を植える。月が欠けていく時期(下弦の月)に春に植樹予定の穴を作り、肥料を入れる。果樹の剪定(斜め切り)、耐霜性の樹木を植える。
畑では、レタスと玉ねぎを植える土地の準備。クレソン、人参、ラディッシュの種を蒔く。豆を収穫。月末には、春キャベツと冬レタスを植える。栗、胡桃、ヘーゼルナッツ、かぼちゃ、メロンを収穫する。
庭では、肥料と花の種を蒔く。バラ、菊、百合、水仙、チューリップ、シクラメン、ヒヤシンス、アネモネを植える。ダリアやバラなど、秋の花を収穫。」
ポルトガルの田舎に住んでいて思うのは、みんな月の満ち欠けで農作業や庭の手入れをしているということ。木の剪定に関しては、その木を立派に生かすも殺すも月と関係していて、
「その木、いらないなら新月にカットしな、」
「その木は、次の満月の時に枝を切るといいよ。」
とか言われる。
庭仕事の手を止めて、月の状態を待つことにするのだが、ベストな頃合いにはすっかり全て忘れてて、次のサイクルを待てば、今度は暇がなく。自分のライフサイクルは、もはや月と共にないのだと、気付かされ、悲しくなる。
昔からの、農作業における知恵と伝統を受け継ぐべき人間がまた一人、この村から消えた。