• 2017.10.31
  • コロンブス・デー
10月12日世界各地で『コロンブス・デー』を祝いました。イタリアのジェノヴァ駐在特派員Patrizia Margherita さんが記事の中で言及されていた、クリストファー・コロンブス (母国イタリアではクリストフォロ・コロンボ)がアメリカ大陸沿岸の島に到着した1492年10月12日、所謂『コロンブスのアメリカ発見』の記念日です。 とは言っても、発見したのはインドへ行く西廻りの新しい航路であって、彼自身、着いたのはインドだと亡くなるまで信じていました。いまでもカリブの島々は“西インド諸島”と呼ばれていますね。

ところでこの『コロンブス・デー(Columbus Day)』という名称が最近になって疑問視されるようになったようです。勝手に他人の土地に入り込んだ侵略者の名前をつけた祝日はけしからんと言う訳で、例えば米国のロサンジェルス市は今年から『先住民の日(Indigenous Peoples’ Day) 』と名称変更したそうです。此の伝でいくと、コロンビアとかコロンブスという名称を使用している大学やらレコード会社、アパレル大手、はては国家まで名前を変えることになるのでしょうかしら。

此処スペインでこの日は『スペイン国の祝日(Fiesta Nacional de España)』 と呼ばれています。コロンブスの偉業を祝うだけでなく、一人の聖母を記念する日でもあるのです。紀元後40年、キリストの十二使徒の一人である大ヤコブはスペインでの布教に苦心し、サラゴサという町の川辺で弟子共々祈りを捧げていたところ、大理石の柱の上に御姿を現したのが『ピラール(柱)の聖母』です。この聖母、のちにスペイン国の守護聖人となる大ヤコブを助けたということで1908年の王令によりスペイン軍総司令官の称号まで戴きました。この聖母の記念日が10月12日なのです。


日本にもおられるピラールの聖母。長崎県美術館所蔵 須磨コレクション中の『聖ヤコブへのエル・ピラールの聖母の出現』です。フランシスコ・バイェウというゴヤの義理の兄にあたる画家の作品。

そこでこの日10月12日には国王陛下ご臨席の下、軍事パレードが行われるようになりました。
祖国の為に命を捧げた英霊はもとより、スペイン国内で起きたテロ事件の被害者や外国で事件に巻き込まれたスペイン人の慰霊と、軍隊、国家警察、市民警察、救急隊、消防隊等々、国民の安全を守る組織に 感謝をささげる儀式でもあります。パレードのなかでも毎年の人気者はなんと“山羊”。アフリカ大陸北部のスペイン領メリージャに駐屯する外人部隊のマスコットです。今年はメス山羊の“Roco”が選ばれて晴れ舞台を踏みました。


メス山羊ロッコの雄姿

さて、このコロンブスさんのアメリカ詣(本人にとってはインド詣)、1492年の第一回目から合計四回も行き来しています。最後の航海を終えてスペインに帰ったのが1504年11月7日それから二年後、当時スペインの首都であったバジャドリードで生涯を終えました。漸く航海続きのお忙しい生涯が終わって静かに眠ると思いきや、根っからの船乗り根性からか、死んでも動き回ります。棺は新大陸貿易の中心都市であったセビリアに移されたあと、九度目の大西洋横断、第一回航海で最初に到着したサント・ドミンゴ島に移送され、そこから今度はキューバに転居、米西戦争敗戦でキューバがスペインの支配を離れるとまたまた、大西洋を渡ってスペインへお里帰り。最終的にはセビリアの司教座聖堂に安住の地をみつけました。



セビリアの司教座聖堂内に安置されたコロンブスの棺です。カスティージャ、レオン、ナバラ、アラゴンの4つの王国を象徴する4人の若武者が棺を掲げています。ライオンの紋章をつけたレオン王国の若者が持っている十字架のついた槍の先をみると、ザクロの実を突き刺しています。このザクロはスペイン語でGranadaといいグラナダ王国と同じ名前ですので、そのイベリア半島最後のイスラム国を陥落させたという意味があるそうです。



この葬送を見守る壁画の巨人は“聖クリストバル”。幼子キリストを担ぎ河を渡したことから、キリストを背負う人(クリストバル・クリストフォロ・クリストファー)という名前になりました。旅人の守り神、運転手、操縦士、運送関係従事者の守護神、として知られていて、スペインではこの聖人のメダルやステッカーをダッシュボードに張り付けてある車をよく見かけます。 スペイン版成田山不動尊交通安全のお守りですね。
蛇足ではありますが、“コロンブス(Columbus)”はスペイン語ではブスを抜いて“ コロン(Colón)”です。

特派員

  • 山田 進
  • 職業スペイン語・日本語通訳

スペイン政府より滞在許可と労働許可を頂き、納税・社会保険料納付をはじめて早37年。そろそろシルバー人材センターへの登録も視野に入った今日この頃、長い間お世話になったこの国のことを皆様にご紹介できることを楽しみにしています。

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