もちろんそれら以外にも各地で個性的な催しが目白押し。今回はアンダルシアの古都コルドバでいかにも春爛漫のお祭りを拝見してきました。2012年にユネスコ世界無形文化遺産にも登録されるというお墨付きを獲得した“La Fiesta de los Patios de Córdoba-コルドバのパティオ祭り”です。
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パティオというのは中庭のことで、家の中心部を屋根の無い吹き抜けにして、明かりを取ったり、風通しをよくするための空間です。庭を囲んで家を建てるといったほうが正確かもしれません。京町屋の坪庭を想像して頂くと当たらずとも遠からずかな。とは言ってもその意匠たるや、方や日本はアジアでも一番東の国でトレードマークは“わび、さび”、もう一方スペインは西欧のそのまた西の端、“光と影、情熱の国”。当然の事ながら、庭の風情が“かやくご飯“と”パエージャ“ほど違うのは写真をご覧いただければ一目瞭然ですよね。そもそも比べる事自体無理があるかもしれません。
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遠くはローマ時代以前からの歴史あるコルドバは、スペイン南部での定石通り、8世紀から13世紀までアラブ王国としてイスラム文化が花開き、また西のメッカと呼ばれるほど宗教的にも重要な都市でした。建築もイスラムの伝統に従って外観は他人に嫉妬心を抱かせないよう、なるべく質素にし、内部の住空間を快適に整えるという、グラナダのアルハンブラ宮殿に代表される様式なのです。自身の美しさをひけらかさない、秘すれば花ということでしょうか。
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コルドバの“パティオ祭り”では毎年コンクールが行われます。それに参加する中庭は基本的には個人の所有で、多くが飾り気のない外観ですが、内側に美しい空間が隠されています。しかしそれを独占するのは気が引けるというか、心の片隅にある“自慢したい”という健全で最良な意味での自己顕示欲を刺激されるのでしょう。今回も50軒の御宅がコンクールに参加し門戸を開いてくれました。 何軒かの共同管理もあれば、貴族の屋敷跡などは一軒で12もの中庭を抱えているところもあり、親戚や友人でもない限り普段訪れることが出来ない中庭に人々を迎え入れてくださいます。
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中庭を飾る花や草木のお世話も大変な仕事でして、夏の強烈な日差しを反射させるために石灰で白く塗りこめられた壁に吊り下げている鉢には、ホースでバシャバシャ散水するわけにもいかず、竿の先に再利用の空き缶をつけた素朴な道具を使って一個々々に丁寧に水遣りをする姿になんとも風情を感じます。
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ちなみに古いパティオでは高価な大理石の代わりに小石を敷き詰めた床面が多くみられます。暑い夏の昼下がり、打ち水をして熱気を奪う気化熱作用をなるべく効果的に利用する為に小石を凸凹に配置して表面積を広くし冷却効率を上げるという生活の知恵です。草花に囲まれたパティオの日陰でのシエスタ・タイムを快適に演出してくれますし、水を打った後の涼しげな空間でお客様をお迎えする“おもてなし”効果もあります。これは洋の東西を問いませんね。
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