そもそもダイエットという言葉の由来はギリシャ語の“DIAITA=生き方”だそうです。ギリシャ・ローマ時代に象徴されるヨーロッパ文明の揺り籠としての地中海、そこに隣接するエジプトやメソポタミアなども包括した広大な地域で長い間人々の営みを支えてきた食事と生活様式を大きく括って地中海ダイエットと呼んでいます。
同じ地中海を囲む共同体であっても存在する地域、気候風土、お国柄、また宗教、歴史など多くの違いがありますが、その中にある最大公約数、というか通奏低音のような共有部分が食生活を中心に50年代から60年代にかけて注目されはじめました。冠動脈疾患の国際的比較調査や代謝障害による肥満の問題を調べていくと地中海地域の成績がすこぶるよろしかったのがその発端だとか。
博士はその考え方を要約して『地中海文化と食に関する10戒』としました。
以下
1.バージン・オリーブ・オイルを生涯毎日摂りましょう。
2.パンと穀物を忘れずに。
3.毎食に必ず果物を添えましょう。
4.サラダは毎日食べましょう。
5.野菜、葉菜、豆類を組み合わて食べましょう。
6.魚を食べないと長生きしませんよ。
7.ミルクは毎日飲みましょう。
8.飽和脂肪の摂りすぎはいけません。
9.平日も休日も歩きなさい。
10.常に誰かと一緒の行動を心掛けましょう。
この10の戒めを2点に纏めると
『自身を愛すると同じように地中海食を愛しなさい』
『これらの恩恵を隣人と分かち合いましょう』
となります。
戒律とは厳しいイメージですので、お勧めとでも受け取ったほうがよろしいかもしれません。
地中海文化と食に関する10戒
この地中海ダイエットを分かりやすく紹介する為、使用する食材をピラッミッド型に構成した図が日本でも知られています。しかし博士はピラミッドという死者の霊を祀る形よりも生きている人々が崇める対象である神殿に例えたい、としてこのような地中海ダイエットを土台にした健康神殿をつくり食育啓蒙活動を行っています。
先生の活動拠点であるソリア県での子供達向け食育誌の表紙に使用された神殿図です。
健康的な生活習慣の実践、持続可能な環境保全を基礎部分にして、人々の連帯、楽観性、やコミュニケーション、運動、シエスタ(昼寝)等々が柱となりその上に人間の成長、生存に不可欠な『食』を構成する多くの食材が並び、バージン・オリーブ・オイルを頂点に置いて神殿の完成です。ここでもダイエットが必ずしも食だけにこだわらない、生き方を示す言葉だという意味が理解できると思います。
地中海ダイエットの食材1
先日アメリカの総合情報サービスを提供する大手“B”社が世界169の国と地域を健康度でランキングしました。堂々第一位になったのがスペインです。前回2017年度の6位から一気にトップの座につきました。
評価の基準は平均寿命、医療システム、浄水アクセス等が加点要因で減点対象が喫煙率、肥満などです。
この報告記事は『スペインが1位になったのはガスパッチョとパエージャのおかげ?』と始められています。
やはり地中海ダイエット効果でしょうか。
地中海ダイエットの食材2
地中海のイメージは、穏やかな海、点在する島々、燦々と降り注ぐ陽光、豊富な海産物、オリーブや柑橘類・・・となると瀬戸内海と重なり合いますね。明石のタコを小豆島のバージン・オリーブオイル、伯方島の塩、芸予諸島のレモンでマリネした“タコのカルパッチョ”、立派な地中海食和食版の出来上がり。
そういえば、京都の老舗漬物店が、地中海食の主役であるオリーブと和食の重鎮ともいえる発酵食品という二大看板を合体した『地中海産オリーブ漬』を作り上げました。これからも地中海食と和食のコラボが期待できそうです。
ちなみに3月15日は日本では『オリーブの日』、1950年の同日、昭和天皇御巡幸の際にお立ち寄りになった小豆島で陛下自らが種を蒔かれたことを記念して制定されました。今では立派に成長したその姿はオリーブ栽培発祥の地を記念した『小豆島オリーブ公園』で拝見できるそうです。
前回と今回の記事につきましては、下記の皆様のご協力をいただきました。
〇Fundación Científica Caja Rural de Soria (ソリア信用金庫科学財団)
局長 Juan Manuel Ruíz Lisoフアン・マヌエル・ルイス・リソ 医学博士
〇梅花女子大学 食文化部 食文化学科
先生・生徒の皆様
改めてお礼申し上げます。