https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/fs_21_1208
名称はDigital Green Certificate 電子緑証明書?いわゆるグリーンパスとも呼ばれるワクチンパスポートです。その目的は『COVID-19パンデミック蔓延期間中にEU加盟国市民の安全で自由な移動を容易にするため』とし、すべてのEU加盟国間で有効となる予定です。
日本ではたとえば観光を促進するGo・Toトラベルキャンペーン等による人の動きは必ずしも感染拡大と直接関係があるとは限らないとの見解もあるようですが、スペインの場合、旅行などの人の移動が感染拡大の主な原因の一つであるという認識(注1)のもと、国境をまたぐ移動はもとより国内の移動をも制限して何とか拡大を食い止めようと努力して来ました。
しかし一年以上も続く制限措置で欧州各国の中でも、特にギリシャやスペインの様に観光産業依存度が高い国々にとっては書き入れ時である夏のバケーションシーズンに向けて昨年の惨状を繰り返してほしくないという切実な訴えがあり、他国民も一年間の自粛疲れでこの夏は在宅休暇(staycation)ではなく、今まで通り地中海や大西洋のビーチリゾートで思い切り太陽の恵みを楽しみたい、また日常を忘れて羽目を外し旅の恥はなんとやらで大騒ぎしたい(こんな観光公害も今となっては贅沢な悩みだったのかもしれませんね?),そんな思いが募っているので、欧州連合加盟国内でなんとか安全かつ容易な形で観光や人的移動を復活させようと計画されたウイルスワクチン接種証明書です。
デジタルグリーン証明書電子版案
デジタルグリーン証明書紙版案
この例ではワクチン種類名は欧州での製品名Comirnatyで製造業者名はドイツのBioNTch社と記されていて共同開発した米国ファイザー社の名前はありません。まだ叩き台という段階でサマーバケーションキャンペーン開始前、6月中旬の発行を目指して準備が進められています。
この証明書は所持者が
・COVID-19(新型コロナウイルス)ワクチン接種済である、又は
・検査結果が陰性である、 又は
・COVID-19(新型コロナウイルス)から回復した
事を証明するものだそうです。
当然のことながらこの証明書が無くても移動、観光旅行は可能ですがその場合には各国で定められている規則、例えば2週間の隔離期間の順守とか出・入国の際の検査等をその都度行わなければならず限られた時間内での休暇旅行では現実的ではありません。もちろんワクチン接種自体が個人の選択ですからこの証明書携帯も義務ではなく、旅行を簡単にしたい人が希望して取得するものです。したがって接種を受けない人にとっては平等なシステムではありませんけれど、公平な制度でしょうね。
このワクチン接種証明書で思い出されるのは世界保健機関・WHOが導入した国際予防接種証明書・イエローカードです。海外旅行をする際に入国または経由する国、滞在期間によってはこの証明書提示が求められてパスポートと共に携帯しなければならない渡航書類でした。現在でも黄熱病に関しては入国・入境に際しこの証明書の提示を義務付けている国があります。
個人的なお話で恐縮ですが、私が所持しているイエローカードです。発行は半世紀前の1972年。
コレラワクチン接種履歴
初回接種1972年9月2日 (於日本)
2回目接種1972年9月9日(於日本)
3回目接種1977年1月25日(於スペイン)
天然痘ワクチン接種履歴
初回接種1977年1月26日(於スペイン)
最終頁
ちなみに最終頁は『その他のワクチン』用に使用されるので、そこを使って新型コロナウイルスワクチンの接種履歴証明にして頂けたらWHOの基準に則ったお墨付きの国際通行証明書になるのでは?と愚考する次第です。もしもこの記事がワクチン接種済証明書発行関係者のお目にとまれば宜しくご一考の程お願いいたします。
それにしても以前のワクチン接種証明書は黄色なのに今回のワクチンパスポートは緑色とはこれ如何に?
黄色は多分ハザードシンボルとして注意喚起の意味で採用されたのか、はたまた単純に黄熱病の黄色か? サッカーの試合ではイエローカードで警告しますし、交通信号(*)の黄色は横断注意ですよね。
そして緑は交通信号(*)に代表されるようにゴーサイン、通行許可ということでしょう。所で日本では信号機の色は赤・黄・青となって、緑が青と呼ばれています。そもそも日本人が持っている色彩感覚の中では青の範囲が広くてその中に緑色も含まれているのかもしれません。もし野菜不足を補う健康補助飲料の青汁が実際に『青』色だったらとても飲料とは思えない液体になってしまうでしょうし、『青々とした緑』という文章をそのまま外国語に直訳してしまうと発言者または訳者の錯乱か?と疑われてしまいそうです。
(*)道路標識及び信号に関する国際条約では信号機の色は赤・緑・黄色となっています。日本人が緑を青と言うように、スペイン人のなかには黄色信号の色を黄色より橙色に近いámbar(琥珀色)と表現する人も珍しくありません。
(注1)
2020年1月31日 避寒・避暑のデスティネーションとしてヨーロッパで人気のリゾート地カナリア諸島のゴメラ島でスペインで最初の新型コロナウイルス感染が確認されたのはドイツ人観光客の男性でした。
2020年2月7日、第二例として陽性が確認されたのは英国人の男性で、その場所はジョルジュ・サンドとショパンの恋の逃避行でも知られ、高級リゾート地としてマイケル・ダクラス氏などセレブの別荘もある地中海のマジョルカ島です。
すべては中国・武漢から始まって、外国人観光客経由でスペインへ感染という認識は多くのスペイン人が共有しているでしょうね。