• 2023.10.13
  • 記録更新と世界三大ブルーチーズ
2年前に投稿したチーズ・コンテストの記事(*)にスペインのカブラレス・ブルーチーズが世界一高価なチーズとしてギネスブックに登録され、その時の価格がワンホイール約2kgで2万500ユーロ、当時の換算レートで日本円266万5000円と書きました。
(*)https://kc-i.jp/activity/kwn/yamada_s/20211215/

そして今年のオークションではまた記録更新です。ビスケー湾に面したスペイン北部のアストゥリアス公国州(Comunidad Autónoma de Principado de Asturias)にある人口750人余りの寒村アレナス(Las Arenas de Cabrales)では毎年8月の最終日曜日にカブラレス・ブルーチーズ祭りが開催されます。今回、コンテスト部門で優勝したのは隣村にあるLos Puertos デーリィ工房のチーズで、ワンホイール約2.2㎏が3万ユーロ、471万円で落札されました。そろそろギネス記録の書き換えが行われると思います。今回競り落としたのは前回と同じ州都オビエドにあるレストラン経営者でした。

東京の築地市場で黒マグロ一本3億3600万円とピカソの小品並の値段がついたこともありましたが、食べ物の初売りなどの機会に縁起担ぎや宣伝効果もかねて、実質とはかけ離れたご祝儀相場で競り落とすのはスペインも日本と一緒ですね。

このブルーチーズ、昨今のグルメブームでフランス産のロクフォールやイタリア産のゴルゴンゾーラなどは、日本でもそれほど苦労せずに手に入るようですし、ちょっと珍しい英国のスティルトンなども意識高系グルメ・ショップなどでは販売されているでしょう。 ところでこの三種類は世界三大ブルーチーズと呼ばれています。残念ながら上記のスペイン産カブラレス・ブルーチーズは選ばれていません。しかしそもそもこの“三大”とは誰が、いつ、どんな基準で決めたのは定かではないようです。 

日本では世界三大何々という言い方に慣れていて、世界三大料理はフランス料理、中華料理、トルコ料理となんの疑いもなく受け入れています。ところがネットで調べてもその選考経緯についてははっきりした答えが見つかりません。曰く『その昔欧州の歴史家、料理研究家たちが選んだ・・・』と何とも歯切れの悪い説明があります。わけが分かりません。


世界三大珍味はフォアグラ、キャビア、トリュフ、が定説です。しかし誰が、いつ、何を基準にして、味で?値段で?決めたのか。世界三大スープに至ってはブイヤベース、フカヒレスープ、トムヤムクン、ボルシチと4つある混乱ぶり。どうもこれらは日本では常識でも必ずしも世界中で遍く通用する概念ではないかもしれませんね。スペイン人に世界三大とか五大ランキングについて質問しても、答えは“なにそれ?”でしょう。例えば日本人が考える世界三大美人とはクレオパトラ、楊貴妃、小野小町だそうです。平安時代の歌人が世界基準の仲間入りとは、同じ日本人として誇らしい限りですが・・・。


写真1

写真1.は前回の投稿でも添付したカブラレス・チーズです。世界三大ブルーチーズの選考には洩れましたが、好き嫌いは別にしてスペインでは誰でも知っている、それこそスペイン三大ブルーチーズの一つに間違いないでしょう。この食品とは思えない外観と強烈な臭いは、ある種の変態的自虐嗜好者(私を含む)を虜にする魔力があります。ちなみに独断と偏見で私が選んだスペイン三大ブルーチーズとは

〇カブラレス Cabrales  産地 アストゥリアス州 カブラレス地区 (使用乳)牛・羊・山羊

〇バルデオン Valdeón 産地 カスティージャ・レオン州 レオン県 バルデオン渓谷(使用乳)牛・山羊。 カブラレスを手本として近年つくられたチーズ。熟成させる洞窟に存在する青カビの自然定着を待つ本家カブラレスとは違い、世界三大ブルーチーズと同じく製造過程で人為的にカビを注入してつくられます。

〇アンダスル Andazul 産地 アンダルシア州 カディス県 カディス山系 (使用乳)パジョジャ山羊。 絶滅危惧種のこの地域固有種であるpayoya山羊の乳のみで作られる唯一アンダルシア州産のブルーチーズです。

特派員

  • 山田 進
  • 職業スペイン語・日本語通訳

スペイン政府より滞在許可と労働許可を頂き、納税・社会保険料納付をはじめて早37年。そろそろシルバー人材センターへの登録も視野に入った今日この頃、長い間お世話になったこの国のことを皆様にご紹介できることを楽しみにしています。

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