写真1
写真1の様に一見日本の長ネギのような外観ですが特殊な方法で栽培されたれっきとした玉ネギです。その方法とは一度収穫した玉ネギを再び植え付け、白い部分を長くするために成長過程で回りに土を寄せて光を遮りつつ伸ばしていくというものでこの工程はホワイト・アスパラガスや下仁田ネギと同様でしょうか。写真2は土寄せの様子です。そしてカタルーニャ語で土寄せを意味するcalçarがこのネギの名前になりました。そのライフサイクルが図1.です。種の取得から始まって収穫までほぼ2年かかります。
写真2
図1
さて、今では発祥のタラゴナ県のみならずカタルーニャ州4県内各地で行われている冬のビッグイベントが calçotada カルソターダと呼ばれるネギ焼祭りでしょう。写真3.は本家ヴァルス市での様子です。主役のカルソッツ玉ネギはブドウの収穫後剪定された枝や蔓などを燃やした焚火でネギが真っ黒に焦げるまで焼かれます。焼けたらすぐに新聞紙に包みこんで20分~30分蒸らしてから、定番のロメスコ・ソースを塗り付けて食べるのです。アーモンドやヘーゼルナッツ、トマト、赤ピーマン、ニンニクなどをオリーブ油と酢で練りこんだこのソースも発祥はタラゴナ県です。写真4.はロメスコ・ソースとその材料、一見ねり味噌かピーナツ・バターの様ですね。
写真3
写真4
また食べ方も変わっていて、とてもナイフとフォークでお上品に食べるわけにはいきません。真っ黒に焼けたネギの先端をつまんで縦に持ち、もう一方の手で根っこ部分を下に引っ張ると白い中身がヌルっと出てきます。そのトロトロに蒸された白身にロメスコ・ソースを付けて、上を向いて一気にいただく次第です。結果両手は真っ黒、衣服前部は焦って食べたカレーうどん状態の惨状となりますので小洒落たレストランなどではビニール手袋と前掛けが提供されます。
写真5
写真5.は1986年から続くヴァルス市のネギ祭りでのコンクールの様子。20人の参加者平均200本召し上がっていたそうです。そして最高記録は2018年に打ち立てられました。なんと45分間にネギ310本、重さ5.285Kgを平らげた猛者がいたそうです。このカルソターダ・パーティーの主役はネギですが一応前菜の位置づけで、焼いたあとの残り火で肉やソーセージなどを炙って食べ進んでいくという結構ヘビーな宴会です。
写真6
写真7
ところで栽培方法が似ている群馬の下仁田ネギも同じような炭焼き料理があると下仁田町観光協会のHPで知りました。その名も“大名焼き”です。写真6はスペイン版焼きネギで写真7.は群馬バージョン、これだけ見るとこれがカタルーニャのネギ料理と言っても疑う人はいませんね。写真8のように土寄せ栽培現場もスペインとそっくりです。
写真8
スペイン国タラゴナ県ヴァルス市と日本国群馬県下仁田町の直線距離は10373.84Km,こんなに離れていても栽培方法も調理法も同じ玉ネギと長ネギの間に何かのご縁を感じる真冬のスペインからの報告でした。
ちなみに埼玉県の深谷市でもカルソッツ・ネギ焼きイベントがあり“深谷ねぎ祭り”も“Gran Festa de la Calçotada de Valls ヴァルス カルソターダ大会”も同日2024年1月28日開催されました。8時間の時差はありますが。