
図1
とは言っても北海道のヒグマ推定生息数は12,000頭とイベリア半島の約26倍もの数ですし、本州と四国に生息するツキノワグマの推定数42,000頭と合わせると絶対数ではイベリア半島の熊は日本の1%にも満たない数ですからとても比較の対象にはなりません。当然の結果として日本では最近になって毎日のように報道されている熊害(ゆうがい)についてもスペインでは地方ニュースになっても余程の事件でない限り、なかなか全国ニュースとはなりません。
そんな中、今年興味深い判決がアストゥリアス州高等裁判所で出されました。4年前の春、山間の村で75歳のご婦人が散歩中、ヒグマに襲われて顔面と腰に重傷を負いました。ヒグマは1973年より絶滅が危惧される保護動物とされ、家畜や農作物が被害を受けた際には所轄の自治体が損害補償する制度がありますが、人的被害には適用されないのには納得できかねるとして、被害者のカルメンさんはアストゥリアス州政府を相手取って訴訟を起こしました。
そして4年に及ぶ裁判の結果、今年2025年4月、裁判所は原告側の訴えを認めて州政府に合計83,600ユーロ(日本円で13,626,925円)の賠償金支払いを命ずる判決を下したのです。この金額はリハビリテーションを含む医療費は無論のこと、熊に壊されて新調した眼鏡代金269ユーロ(48,679円)まで含まれていて、53,600ユーロの実費以外に精神的苦痛に対する慰謝料として30,000ユーロ(5,428,923円)も計算されていました。もし日本でも熊による人身被害ごとに賠償金を払っていたら大変な額に上るでしょうね。写真1は事件が起きたアストゥリアス県在住のヒグマです。この件の犯人ではありません・・・と思います。

写真1
イベリア半島内でもう一つの生息地、ピレネー山脈地域のヒグマはほとんど絶滅の危機に瀕していたのでフランス主導で1996年から始まった東欧スロベニアからのヒグマ導入プログラムが功を奏し現在およそ90頭まで増えましたが、近年、狂暴化した個体が放牧牛を襲うなどの被害も報告される事態も出始め、改めて希少種の保護と熊害対策の両立の難しさが問われています。スペインやフランスでは前述のように熊被害に対して補償制度を設けるなどして共生の道を探っているのが現状です。図2はスペインとフランスにまたがるピレネー山脈地域のヒグマ確認情報です。

図2
ところで日本には北海道にヒグマ、本州と四国にツキノワグマと2種類の熊が生息しているので、北海道土産で一世を風靡した鮭を口にくわえている木彫りのモデルはヒグマ、足柄山で金太郎が相撲を取った相手はツキノワグマ、と分かります。また世界的に有名な熊となるとプーさんですが、英国籍のヒグマと思いきや、そのモデルはカナダ出身のアメリカグマ(Ursus americanus)だそうです。 英国がらみでいうと2022年エリザベス2世女王の在位70周年祝賀記念式典の際、陛下より午後のティータイムに招待された熊のパディントンは南米ペルー出身ですから、メガネグマ(Tremarctos ornatus)と推察します。
とまれ、愛されキャラでもある熊さん達と上手に付き合っていく方法はないものでしょうかね。
