• 2017.09.20
  • 変わりゆく駅
ミラノに来たばかりの当初、イタリア語も出来ないまま他の町へ観光に繰り出しました。観光ガイドブックを見て、どれくらい見応えがある町なのかはよくわからないけれど、とりあえずこの町に行ってみよう、とよく調べもせずに出発したものでした。空調さえ付いていないような古い型の電車に乗り込んで、開け放った窓から乱暴に吹き付ける風と凄まじい騒音に閉口しながら、思いっきり揺さぶられた後に目的地らしき駅に到着。長時間でもない電車の旅だったにもかかわらず、駅のホームに降り立った時には、揺さぶられているうちにずれていったのではないかと思う骨のつなぎを元に戻したいような感覚が残ったものでした。


さて、目的地の駅に着いたものの、自分が思い描いたような状況とは全く違う事態に直面していることに気がつくのです。日本では駅を中心にその町は発展して、駅周辺が栄えています。イタリアでは、主要駅は町から離れた所に作られ、時には人寂しいような場所であったりしてこの町には人が住んでいるのだろうか、という疑問にかられたりします。下準備を全くしてこない私は、また失敗したぁと思うのですが、同じ駅で降りた乗客が行く方向に付いて行きます。うまい具合に町の中心に導かれた時はホッとして、本人知らずの道案内をしてくれた人たちの背中に向かってサヨナラを言って、自分のペースで町歩きの始まり始まり。

その後ミラノに定住してからも、仕事の関係で電車はよく利用したものです。電車の出発時間に間に合うように駅に行くのですが、どちらかと言うとギリギリに着いて早歩きで息を切らせながら、時には汗だくになりながら電車に乗り込むのが通常。それが、ある時から早めに駅に着いていることに抵抗どころか苦痛を感じなくなったのです。それは、駅にブティックが出来たからなのでした。


ミラノの中央駅は、駅建物自体はファシズムの威信をかけて作られたので見応えがあるのですが、その壮大な駅を見上げて口を開けるのを一体誰が毎回繰り返し続けることが出来るでしょう。有り難い事に、今では駅構内で衣料品店や改装したてのカフェで待ち時間を有効に使えて、駅に早めに到着する楽しみが出来た、という訳です。


ブティックで思い出しましたけれど、ミラノの聖ラファエレ病院を初めて訪れた際に、他の病院とは明らかに違う点がありました。駅から病院に直結する地下道にはブティックが並んでいるのです。ホテル内のブティック街を歩いているような感じがしたのは、病院に連結しているホテルがあるからなのでしょうか、、、

近い将来、ミラノの中央駅にも、例えば大丸デパートや丸の内ホテルが直結している東京駅のように、直結する華やかなショッピングモールや高級ホテルが出来るでしょうか。聖ラファエレ病院のようにミラノで最高にオシャレな病院の直結、、、つまり、駅に行けば、何らかの意味で最高のものがある、、、かなり長そうな道のりです、、、この長そうな道のりについては、先々お話する機会がありそうです。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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