さて、そのフェスティバルに参加している仲間の中にミラノ出身の男性がいて、ある朝、彼が何かに怯えているかのような様子で現れました。怯えている他に普段とは違うのは眼鏡をはずして来たことです。一体どういう訳でしょう、、、
「大変なことになっちゃったんだ」と私の耳にささやき、周りをキョロキョロと見回しました。「Palioに向けての例の行進の騒音が僕の我慢の限界を越えていて、だって、安眠出来ない晩が続いているから。それで夕べね、行進の行列が僕の窓の下を通ってる時に、僕はとうとう騒ぎに我慢が出来なくなっちゃって窓から行進にめがけてバケツの水をかけちゃったんだ。そうしたらね、行進の人たちが怒っちゃって『誰だー!水をぶっかけてきたのは!!』と怒鳴り始めて僕の窓の下に集まってそこから群衆が動かなくなっちゃたんだよ。『降りてこい!!』って群衆が連呼を続けるから、僕は近所迷惑も気になるしで困りに困り果てて仕方が無いから窓から顔を出して『水をかけてごめんなさい。僕、ミラノから来ていて、だからシエナの人たちがPalioの行事をどんなに大事にしているかを理解出来ずに騒音に閉口して、思わずこんな軽卒な行動に走ってしまったんです』と謝ったんだけど、功を奏でずで群衆が『くそったれミラネーゼめ!愚図愚図言わずにさっさと降りて来い!!』と騒いでなかなか去って行ってくれなかったんだ。毎晩の騒音で眠れないどころか、夕べは恐怖で全く眠れなかった。僕、床屋に行って髪型を変えたいのだけど、認識されないようにと思って眼鏡を外したから周りがよく見えないんだ、君、道案内してくれる?」と怯えながら言うので、気の毒に思うのと同時に笑いがこみあげてきてしまった記憶があります。
さて、今回は本当はシエナのPalioについて書こうと思ったのではなくて、同じPalioでも全く違うPalioを見に行ったことを書きたかったのです。それは、ミラノから20キロ離れたLacchiarellaという小さな町で、毎秋行われるガチョウのレース。
この日のために訓練された(?)ガチョウたちが町の中を走りながら順位を争います。時々羽をばたつかせて跳ねながら走っているガチョウもいたので飛んでも跳ねても反則ではないらしいです。
競走馬(?)のガチョウたちが走り去って、レースはもう終わったのかと思いきや、途中で走るのをやめたりしていて大層遅れをとっていたガチョウが角にひょっこり現れ、のんびりと歩いてる姿を見せて観衆の笑いを誘います。
一位になったガチョウは調教師に抱っこされて表彰台へ。
実に呑気なレースで笑った後は、屋台でガチョウの肉入りラビオリやサラミを購入。一位になれなかったガチョウたちの肉で作られているのかな、などのブラックジョークが飛び交います。 その傍ら、動物愛護団体の人たちがレースに抗議して叫んだりもしています。
小さな町で町民が一体となって続けている微笑ましいこのお祭り、この先も続いていってほしいです。