夏バテで家でゴロゴロしながら何気無くYouTubeを開いたら、リアルに見える絵の描き方という動画が目に留まりました。
どのように描いていくと、ワイングラスに入った赤ワインの絵をグラスを手に取って飲もうとしてしまうくらいリアルに仕上がるかを早送りで見せてくれる動画。
いつもならこういう動画は面倒臭くて素通りするところを最初から最後まで見ている自分に驚きつつ鑑賞しました。
けれども本当に驚かされるのは、勿論、絵の仕上がり具合の方。絵を描くのが上手な人の動画であるのは間違い無いのですが、いくつかのポイントを把握して描くと、プロでなくでも上手でなくてもかなり良いレベルまで行けそうですよ。
さて、この動画が「私の今日」を暗示していたのでしょうか。今日は美術館とか何かの展示会鑑賞に出かけたいなぁ、と思っていた所でミラノ市内の催し情報を検索すると、「見えているけれど、隠れている」というテーマの展示会が目に留まりました。
この展示会は、中国人のアーチスト、リュウ ボリン氏(Liu Bolin)が騙し絵とボディーペインティングの手法で描いたアート写真。
私の過去の記事にも触れたことがありますが、イタリア人は騙し絵を好きらしくて、 ヴィチェンツォ市にある1500年代建築オリンピコ劇場や、ミラノのサン サティーロ教会の中にまで騙し絵を施しています。
ボリン氏は、そんなイタリア人の騙し絵好きなところを気に入ったのでしょうか、ミラノのスカラ座やドゥオモをロケーションに選んでアート作りをしました。
上の写真を目を凝らしてよく見るとわかりますが、ボリン氏のアートは風景に溶け込むように身体中をペイントしています。
この展示を見始めた最初は、遊び心のアートにしては、かなり大規模な事を手がけるアーチストだなぁ、と大した興味もそそられず表面的にボンヤリと見ていたのですが、鑑賞を進めていくうちに、ボリン氏の 社会的メッセージとして受けてもらいたい部分が訴えかけてきました。
例えば、ヨーロッパでは難民受け入れがここ数年の課題となっており、アフリカ大陸からヨーロッパを目指して出発する船が命がけの航海をして最初にたどり着くのは南イタリアであることから、イタリアでは難民受け入れが大きな問題となっているのです。その社会問題について、このアート写真は話しかけてきます。
ソーシャルネットワークは世界とコミュニケーションが図れるメリットをもたらし、且つ、誰自分のコントロールが効かない 野放図状態を作り出しました。 自分の知らないところで識別されて記録されている現代社会についても考えさせられる彼のトリックアートなのでした。