知っている単語で出来たフレーズなのに、意味がわかるようでわからなくてポカンとしていると、イタリア人達はニヤリとして、そのフレーズを繰り返して私の顔を覗き込むのです。
ある会話では「Mangiare a ufo」と言われて、「mangiare」は「食べる」という意味だし、「ufo」はあの未確認物体ユーフォーだから、ユーフォーで食べるっていう意味??そんな名前のレストランでも出来たのかなぁ??と考え、会話の続きを聞き届ければ理解できるに違いないと思い、わかっている振りをして先を待つのですが、そうは問屋が許さない、会話は先には進まない。
そこで「Mangiare a ufo」はタダで食べるって事だよと、私の戸惑った表情を見て楽しんだ後にミラネーゼがニヤニヤしながら教えてくれます。
へぇ?と言ったっきりまた止まっていると、フレーズの起源は大聖堂などの建設、と教えてくれます。ヒントをもらい続けても私の混乱は続くばかり。
「ただ食い」と「建設」がユーフォーにどう繋がっているのか簡単にわかるものでもありません。
更には、ラテン語から来ていてね、とまで言われて、ラテン語なんて勉強したことがない私には話がややこしくなりそうなことが推測できて益々困った顔になっていたに違いありません。
それを察してか、簡単に軽快に説明してくれたお陰でしょう、新しく覚えたこのフレーズをすっかり気に入りました。使ってみたい!
「Ad Usum Fabricae」とは、工場用という意味で、荷車や輸送船に略語のA.U.Fが記されて大聖堂などの建設材料輸送の際の免税が施されていたそうです。
一方、ミラノのドゥオモの建設にあたりこの免税システムは「Ad Usum Faricae Ambrosianae 」と呼ばれ、ミラノの守護神の名前が加えられます。
けれどもこれでは、「Mangiare a ufa」になってしまって、ユーフォーにはならないので腑に落ちない。
「Mangiare a sbafo」が、食事を奢ってもらうという意味なので、「Mangiare a ufa」にモジリを加えて、「Mangiare a ufo」となるわけでありました。ご馳走になる、と言うよりかは、どちらかと言うとただ食いの意味が強いらしくて、となると全てのシチュエーションでは使えないのですが、気さくなミラネーゼに出会ってこのフレーズを上手に使えば、驚かせることは勿論、笑いを取れるかもしれませんよ。
ちなみに、レストランでの支払い時に、「Facciamo alla romana」(ローマ風にしようぜ)というのは、割り勘のこと。
ところで、「Ad U.F.O」の免税システムを使って運ばれていた建設材料の主な物は、大理石。イタリアの大理石の質の良さと美しさは、世界中に輸出されるほど有名です。私の家のバスルームも大理石にしてみたいものです。
さて、決して輸出されない大理石が一つあるのです。輸出されないどころか、イタリア人でも決して買うことができない大理石。
それは、ミラノのドゥオモにだけ使われるCandogliaの大理石。ロンバルディア州のお隣のピエモンテ州にある大理石採石場。その大理石の美しさは、ミラノのドゥオモをご覧になればよくわかることでしょう。
私の知り合いの建設会社の人も、Candogliaの大理石を手に入れようと試みましたがあっけなく終わったそうです。
見慣れたミラノのドゥオモではありますが、手に入れることが叶わないことがわかった今、その大理石をそっと手に触れてみようと思います。