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  • 2020.09.16
  • 秘密の花園
少女時代に読んだ本「秘密の花園」。

忘れ去られて誰も知らない庭を見つける少女、という秘密と冒険めいた設定をとても気に入って何回も読んだものでした。自分もそんな場所を発見出来たらいいのにぃ、、、と思いながら、 自分が育っている周りを眺め回して、隠れ場所の発見可能性の低さにがっかりしていたものでした。

ところが今になって、秘密の花園を見つけることになるとは!

その花園は、ミラノの我が家の一角には見つからなくて、車を4時間飛ばしてスロベニアとの国境近くにあるトリエステという町に見つけたのでした。


人口約20万人のトリエステ。6倍の人口を持つミラノ住まいの私にとってトリエステの存在は「歴史上イタリア 4大湾港都市の一つで繁栄したけど今は小都市」程度にみなしていたのです。が、実際に訪れてみて面白い発見の連続。

トリエステの見応えのナンバーワンは統一広場。


広場を囲むようにして並ぶオーストリア統治色の残る数々の建物は夜も見事にライトアップされ、日中の観光とはまた違った趣を味わえます。オーストリア統治時代の影は、 トリエステの伝統食にも見受けられ、しかもコーヒー文化にも伺えることが興味深く感じられました。


ところで、トリエステの市民の特徴として、家の中には留まらない、と教えてもらいました。 つまり、大概外出しているとのことです。海と山に挟まれた町ということで町から便利な距離で様々なアウトドアライフが楽しめるトリエステの地形が大きく影響しているのでしょう。例えば、お昼休みにはオフィスから出て5、10分も歩けば快適なビーチで日光浴を楽しめて、アフターファイブにはたとえ暑い夏場でも広場に出されたテーブルでアペリティフをしながら心地よい海風を受けて夕方を快適に過ごし、しかも物価が比較的安い町なのでそのまま外食へとナイトライフの延長も大あり、週末には町の背後にそびえる山に向かいアウトドア アクティビティーを楽しむといった感じでしょうか。


平坦な町ミラノに住む私は、上り下りの激しい坂道だらけのこのトリエステの町での移動で、いつも息切れ。 車で移動するにしても、ジェットコースターで上り下りを迎えるような気持ちにさせられる坂道もあるわけで、運転も決して容易くはないのです。さらにはLa Boraと呼ばれる風速150キロに達する突風が吹き通る町ということで、飛ばされないように掴まるための手すり、杭やロープが街中に備え付けられているのも面白い特徴。スリル満点の町。


さらなる驚きの発見は、なんとビーチを男性用と女性用に分けた伝統をキープしているところが今だに存在。トリエステの男性は、朝から晩までお酒を飲むのが大好きらしいので、きっと奥さん達に咎められずに飲酒を楽しみたいに違いないし、女性の方は男性の視線を気にせずに日光浴を楽しみたいに違いないと私は推測したのですが、実はほぼ逆らしい、、、

こんな風に私の「トリエステ 驚きの旅」は続いていき、締めくくりに「秘密の花園」との出会い。ヨーロッパで2番目の規模を誇る約5千種類のバラが植えられているバラ園が街中に存在する事をトリエステ市民が知らないことも驚き。タクシーの運転手でさえ!

もともとは、精神病患者を受け入れていた建造物が建つ丘。そのせいなのかトリエステ市民はその丘の存在を考慮に入れなくなったらしいのです。今では、大学が丘全体を買い取って残る建物を研究所として使っているのですが、外部からの入場を妨げる塀も門もなく、年間24時間誰でも入場可能な地帯。その丘の頂上に、誰も知らないバラ園が。


そして夜間は、本当に人っこ一人いない。

ミラノだったら、こういう夜の公園、林、街角は、麻薬中毒者などがはびこってしまうか、トラブルな場所として門限を敷かれ閉場時間設定のどちらかなのですが、ここは秘密の花園を探しに来る人を静かに待っているのでした。

驚きがいっぱい詰まったトリエステ。あなたにも新鮮な驚きがあるでしょう。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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