そんな若者達の気を引こうと、クラシックオーケストラの奏者達が通常の燕尾服を着ずにブルージーンズと白いシャツで演奏する試みをした企画も見受けられました。クラシック音楽に親しんでもらおうとまずは服装を変えることから始めてみたようですが、全くもって何の反響も得られなかったのが実情。
幼少の頃にピアノやバイオリンを習ったことがあるというイタリア人青少年達に出会うことがあり、習得の続いた期間は長かったり短かったりと色々ではありますが、結局辞めたことを残念がっている様子もありません。よくよく聞き出していくと、先生の教え方が、、、と耳の痛いコメントが聞こえてきました。その背景にはどうやら時代の移り変わりが大きく影響しているようです。私が楽器を習得した時代は、音楽スパルタ教育時代でしたので先生のサポートは必須で、先生の言う事は絶対的な権威を持ち、先生達は厳しい態度でレッスンを行い、先生に褒めてもらえるように何時間も何日間も同じことを繰り返し練習していたものです。が、今の時代はワンクリックやボタンを一押しするだけで成就する事柄ばかりです。事柄を成し遂げる時間的感覚が違う事が、楽器演奏の習得にも大きく影響しているようです。そして、LPレコードなどのアナログ音楽時代は終わって今ではデジタル化された音源で、高音質のスピーカーを通して音色を堪能し音楽と向き合う習慣は無くなり、携帯電話にイヤーホンを差して通学通勤などの道中を快適に過ごさせてくれるお供となりつつあります。
ライブのコンサートを聴く事はより感動的な体験が出来るとは頭では理解できてはいても、イタリア人が劇場やコンサート会場に赴く習慣が減ったように思います。それはアマゾンや配達の発達の普及で注文すれば何でも自宅に届く時代になった事も影響しているのでしょう。
が、文化に対して出不精になりつつあるイタリア人達が、期待をいっぱいにして会場に向かうであろうと思われる新企画がこの度ミラノに誕生しました。それは、ミュージカル。ミュージカル シアターの国際的規模のフェスティバルとアワードという新事業が生まれました。映画でいうアカデミー賞のミュージカル版といえば想像しやすいでしょうか。
ミュージカル シアターは、オペラが進化して発展した現代版オペラとも呼べるのではないでしょうか。ストーリー、セリフや音楽や踊り、舞台転換、コスチューム、照明などの色々な要素から成り立っている統合的音楽演劇であり、10年以上に渡るロングランの出す作品も多く、子供からお年寄りまで愉しめるエンターテインメントとして対象年齢層が広い事もミュージカル の求心力を物語っていませんか。
ですからミラノが、ミュージカル アワードのフェスティバル会場として選ばれた事は喜ばしい限りなのです。
アワードに来てみたくなるでしょう?