ミラノの町を1人で観光して歩き回ってお腹がすいてきた所、さてどんな所で昼食をしようかとレストランの前を通りながら、看板のメニューを見はじめたのでした。1人という事が優柔不断にさせるのか、入りやすそうな場所が見つからないのかウロウロと歩き回り、空っぽの胃袋が不満そうにグゥグゥ言い出し、午前中いっぱい歩いたので疲れもたまりはじめて、まさに座って休みたい時。
メイン通りからちょっと横に入るとガラリと雰囲気が違って、どちらかというと薄暗い印象で狭まった通り。それなのに賑やかな様子。それは行列で賑わっている店があるからなのでした。美味しい店に違いないことが一目瞭然。
一見パン屋のようですが、あまりの人だかりで何を売っているのかが見えなかったのですが、通りには香ばしい匂いが立ち込めているのと、買ったばかりの湯気だったパンのような物を頬張っている人々の姿が見えて、食欲が大いにそそられました。そのお店の店内には椅子も無ければテーブルもありません。それこそ店外にさえも腰掛けられる所は無く、買ったばかりの湯気立ちパンをミラネーゼたちが路地に立ち留まって頬張っているのです。ネクタイを締めたスーツ姿のビジネスマンもいれば学生も居て、店の前は色々な年代層で溢れかえっていました。何を食べているのかもわからず何と注文すれば良いかも知らずに行列に揉まれて先に進んで、やっと私の番。ディスプレイには美味しそうな物が色々並んでいて選ぶのに迷いそうだったのでしたが、まごついていたりしたら他のお客さん達に順番を越されてしまいそう。一番素っ気ない様子の物があの湯気立っていたパンとわかった時は、先を越されても良いから他の品物も物色しようかとは実の所思ったのです。店内はお昼時のピークでお客と売り手の勢いあるやり取りで凄まじい喧噪。私は決心をつけて物体のしれないあのパンを指差して注文。品物を受け取る前の待たされている間に気がついたのは、日本語の雑誌や新聞の切り抜きがあちらこちらに貼られていて、このお店の名物を紹介しているのでした。ルイーニのパンゼロッティ。パンゼロッティとは揚げピッツァと言ったらわかりやすいでしょうか?
人混みの中から何とか抜け出して、熱々の揚げピッツァを半分だけ紙袋から出してパクリと頬張った途端に、中から熱々のトマトソースと熱々のチーズが飛び出してきて、口の中の火傷は勿論、私の口元も、それに手も、さらには洋服も赤と白に塗りたくられてしまいました。
まぁ、なんと恐ろしくて、酷い目に遭わせられる食べ物!
ところがそんな事はどうでも良くなるくらい美味しかったのです。紙ナプキンであちらこちらを拭いながら私はパンゼロッティを味わいました。
そして思ったのです「 とっくのとうに雑誌に紹介してあるなんて、さすが日本人!世界中にある美味しいものに目がない」