何度も仕事で日本を訪れているイタリア人に、日本人の家の中を一度は見てみたいと言われたことは確かにありました。ホテルや旅館での外国人としての滞在からは想像できるようなできないような日本人の生活スタイル、これを見たことが無い外国人たちは一体どんな事をイメージしているのでしょうか。まさか和装で生花をしたり、お茶を立てたり、男性は袴姿で侍のような出立ちで畳に座っているとか?!
言われてみればそんな私も海外の国々を旅行すると、観光中に窓から見える家の中を垣間見て、人々の暮らしを思い描いてみるものです。
住宅事情の一つで、面白かったのがパリ。はるか昔に建てられたアパートに住んでいた友人を訪ねた時に、路上から建物に入る扉も細めで、入った後も細い廊下が続き、友人の住むフラットに行くための螺旋状になった階段も細く斜めに傾いてたり歪で、体をくねらせバランスを取りながら登り切ったら、今度は踊り場も無いに等しいところに家の玄関ドア。消防法なんてものが存在しなかった時代に建てられたことが丸見え。
ベネツィアに住んでいた友人を訪問した時もなかなか面白く思いました。ベネツィアは高潮時に冠水する建物がほとんどなので、地上階には住めないのが通常。車が走らない街なので、引越し作業がややこしく、でも船に積んだりして出来ないことは無い。景観維持の理由もあって新しい建築物の建設も容易ではありません。もし金銭的に行き詰まっていたら、やむを得ず地上階に住んでしまう人もいるのでは無いかしら?高潮の度にハラハラドキドキ、就寝中に気がついたらベッドがプカプカ浮いている、なーんてね。
ミラノには、オーストリアが支配した面影を残す昔ながらの石造の建物と、ファシズム時代の威圧的な建物と、最近の建築であるモダンな建物が混在しています。特に昔ながらの建物の特徴の一つは、天井がとても高いこと。そういう家は冬季の暖房費が高くつくことから、アパート一括暖房であるかどうかを確かめることが、購入や賃貸前の大事なチェックポイント。
近年の住居法では、バスルームから他の部屋の間に、扉で隔てる空間(一種の踊り場のような)を設けるのが規則。つまり日本のようなワンルームマンションの設計は近年のイタリアではあり得ないのです。バスルームに入るためのドア、と他の居住空間に入るためのドアはそれぞれ別になっていないといけないと言ったら、わかりやすいかしら。
そうすると家の広さの割にはドアだらけな住居になってしまうことに閉口し、不要なドアは内緒で取り外してしまう人が多いようです。開けっ放しにすると次の空間に入れないドアの設置場所になっていたりしたら、開けたり閉めたりの連続。こういう場合、日本のような引き戸が便利だと思うのですが、イタリアでは賃貸の場合でも壁に絵をかけたりなど穴を開けることはかなり自由に行われることが関係しているのでしょうか、イタリアで引き戸文化の浸透は、本当にゆっくり。