それはさておき、お風呂好きの日本人は、公共的な銭湯や温泉をも日常的に楽しむ国民だと思いますが、イタリア人はそうではありません。古代ローマ人の入浴習慣についてはコミック漫画のテルマエロマエでご存知だとは思いますが、例えば、ローマのカラカラ浴場の遺跡は世界的に有名な観光スポットとなっていて、訪れた観光客が、その大浴場の周りに図書室、遊戯室などの色々な娯楽施設が集まった複合施設だったと言う奥深い歴史に感嘆するにもかかわらず、現代のイタリア人は、日本人の入浴好きには遥かに劣っているように思えます。
その証拠の一つに、現代でも素敵な温泉施設などがイタリア各地に存在しますが、基本が水着着用なことから、お風呂の楽しみ方が日本人のそれとは違うように思えます。つまり男女混浴。日本人は、家庭でお風呂に浸かるのと全く同じように公共の銭湯や温泉で、入浴前に身体を洗ってから熱いお湯に浸かって、周りに見知らぬ人が居て入浴していても、それは全く問題なく、心身ともに洗われて癒やされる状態を堪能しますが、イタリアの温泉施設でのイタリア人たちは、男女混浴で水着着用をして、頭から爪先まで石鹸で洗うことなく、ぬるめのお湯に浸り、色々なタイプのサウナを試したり、ジャグジーバスなどに浸かるといったように、水を使って健康を促進する機能がある施設で、つまりスパでリラックスすると言う感じです。もしかすると、温泉に入るよりも、温泉水を飲んで治療効果を高める習慣の方が多い気配がします。
そんなこんなで、日本の銭湯や温泉に抵抗があって公共の大浴場などでの入浴を拒むイタリア人観光客は、結構沢山いるのではないでしょうか。まず最初に拒否反応を起こすのが、知り合いであろうがそれこそ知り合いでも無い人達全員が素っ裸になって共に入浴することらしい。人前でそんな無防備な状態にはなれない、ということでしょうか。それは、もしかするとヨーロッパ各国が大陸続きで侵攻や征服の繰り返しをしてきた歴史の名残で、自己防衛本能の一つかもしれません。
今日に至っては、公共の大浴場で入浴なんて絶対ヤダヤダと食わず嫌いで嫌がっていたイタリア人も、試してみたら日本の銭湯や温泉の楽しみ方の良さがわかって、最後には病みつきになっている人もいて、それはそれで喜ばしいし、またその変わりようが微笑ましい。