加えて、料理に関して意固地に保守的だったイタリアも、近年は様々な食材が流れ込み、結局料理好きなイタリア人は、新しい味覚の追求に情熱を燃やしている所でしょうか。
そんなイタリアに暮らして、私は食事に不満があるわけがないのですが、それでも時々、和食が恋しくなるものです。
寿司ブームから始まりラーメンやお好み焼きなどなど和食ブームのお陰で、イタリアでも不自由なく和食を食べられる時代になったのですが、それでも自国で食べるお寿司の質の高さには及びません。
例えば、かっぱ巻き。きゅうりだけ巻かれる非常にシンプルなお寿司ではありますが、ここでは日本のきゅうりがいかに美味しいかを痛感させられる一品。よくよく気をつけると、イタリア人にはきゅうり嫌いな人が多いのです。日本のきゅうりを食べて育っていたら、きっときゅうりを好きになっていたよ、と私は心の中で呟きます。
ところで、同じ食材の食感が違っても、おいしさが堪能できる食材の一つに意外なものが、それはウナギ。
ヴェネツィアから約100キロ南下したところに、Comacchio(コマッキオ)という町があります。『小さなヴェネツィア』と称される美しい水路の町で、ウナギで有名です。
観光客で溢れるヴェネツィアに疲れたら、こちらのコマッキオがお勧めです。お勧めの観光の時期は、秋に行われるウナギのフェスティバルですが、もちろん時期外でも素敵な所です。
なぜコマッキオはウナギで有名なのかと言うと、遥か昔から、それこそなんとローマ時代からウナギの養殖をしている町なのです。コマッキオは湿地帯で、そんな地域の特色を活かしてウナギを育てています。伝統的な手法と現代的な技術を組み合わせた方法で、質の高いウナギの生産を誇っています。
コマッキオでは、ウナギ博物館もあり、ウナギ見学ツアーも充実していて、地元の人は、村を挙げてウナギ生産で活発に活動しています。フェスティバル中は地元の音楽やダンスなど、文化活動も盛んで、大人も子供も楽しめる場所として知られています。
ところでウナギといえば日本人だったら鰻重ですが、イタリアは、ウナパスタ?
いいえ、コマッキオでは、炭火焼、オーブン焼き、マリネ、トマト煮込み、フライ、リゾットが代表的なウナギ料理です。
コマッキオのウナギは、日本で食するウナギに比べると、脂が少なく、肉質がしっかりしています。そのため、濃厚なトマトソースや、ローズマリーなどの香草を使った調理法に向いているのだそう。
タレをたっぷりかけてジューシーに焼き上げた日本のウナギ料理を食べ慣れた人には、コマッキオのウナギにガッカリするか、と言ったら大間違い。日本人も舌鼓を打つ美味しさですよ。