• 2024.05.16
  • マナス‐世界一長い叙事詩
キルギス共和国の首都ビシュケクの街を歩くと、叙事詩の英雄ことマナス(Manas)の記念碑を見かけます。その前を毎日通っているうち、徐々にマナスのモニュメントやその語り部であるマナスチ(manaschy)に注意を払わなくなっていきます。私の家族や親せきの中にも、マナスを何時間も何日間も諳んじ続けることができるマナスチがいます。では、この叙事詩とはどんなもので、マナスとは何者なのでしょう? なぜ、彼のモニュメントがビシュケクの中央広場やその他の重要な場所に設置されているのでしょうか?
文学作品の世界には多種多様な叙事詩が溢れていますが、中でも量の多さと内容の深さにおいて突出しているのがこの「マナス」です。キルギス共和国の文化遺産に指定されているこの叙事詩は、スケールの大きさと壮大なプロットで感動させ、作中に登場する英雄と出来事で読者を虜にする力があります。この唯一無二な文学の傑作を掘り下げ、「マナス」を世界最大の叙事詩たらしめているものは何かを探ってみることにしましょう。
叙事詩であるだけでなく、キルギスの国家的シンボルにもなっている「マナス」のルーツは古代にまで遡ります。最も古い記録は17世紀のものですが、この叙事詩の物語の多くは、世代から世代へと何世紀にもわたって口承で伝えられてきました。冒険譚と豊かな文化史で知られるこの叙事詩は、キルギス人の精神と価値観を映し出しています。
「マナス」はおよそ50万行という膨大な行数で構成される、世界最長の叙事詩です。ギネス世界記録に「世界で最も長い叙事詩」として登録されているだけでなく、ユネスコの「人類の口承および無形文化遺産に関する傑作」にも認定されています。
https://ich.unesco.org/en/RL/kyrgyz-epic-trilogy-manas-semetey-seytek-00876
「マナス」は多くの章やエピソードに分かれており、それぞれがマナスやセメティ、セイテクなど、主な役どころである英雄たちの様々な冒険と偉業を物語っています。
英雄らしい戦いからラブストーリー、精神的探究、道徳的な教訓まで、物語のテーマは幅広く、キルギス人の文化的・社会的価値観を表出し、正義と名誉、忠誠心の理想を描き出しています。
キルギスのアイデンティティと国民意識を形成し、それを維持するうえで重要な役割を果たしている「マナス」。この叙事詩は、キルギス人にとっては世代を超えたインスピレーションの源であり、文化遺産の重要な要素であり続けているのです。



特派員

  • ダニアール・バクチエフ
  • 職業公務員

はじめまして。ダニアールと申します。公務員です。キルギス共和国に住んでいます。趣味は本を読むことです。また、旅行やいろいろな食べ物を味わうことも好きです。よろしくお願いします。

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