フェスティバルが開催される週末の2週間前からは、ゲイ関連の文化イベントやスポーツイベントが街中で行われます。多くの美術館やアートギャラリーでは特別展示会が催され、アムステルダム動物園では今年、ゲイの動物たちをテーマにしたイベントがありました。映画館や劇場の多くは、他の作品と合わせてゲイ関連の映画の上映や劇の上演を行います。この時期、音楽の生演奏やダンスのパフォーマンスも盛んです。ゲイプライド開催期間中、最大のイベントはキャナル・パレードです。毎年、装飾を施した80隻ものボートが、大音量の音楽に合わせて踊る人々を乗せてアムステルダムの運河をパレードします。参加するボートはエントリーした団体から選ばれており、その顔ぶれは多様なものです。大手のスポーツブランド、銀行、政党、美術館、病院、ラジオ局、ゲイ団体、また地元のクラブや民族団体などもあります。だれでも申し込むことができます。ボートはそれぞれ個性的で見るのが楽しく、観客と船上の参加者たちの間にもたくさんのやり取りや触れ合いがあります。パレードの経路全体がストリートパーティーと化し、お互いに対する尊敬と愛の気持ちを祝います。
アムステルダムにおいて同性愛全般は、世界の他の場所に比べてはるかに受け入れられており、街もそれを誇りに思っています。(オランダにおける結婚事情についての投稿で前にも書きましたが、2001年にオランダは世界で初めてゲイカップルが法的に結婚できる国となりました。)かといって差別が存在せず、権利のために闘う必要がまったくないというわけではありません。それでも、アムステルダムは受容の精神とオープンマインドで世界的によく知られています。この精神はゲイプライドに参加する多くの地元住民の考え方にも根付いており、「自分にとってゲイとストレートの人達には何も違いはない。だからわざわざ違いを取り上げて祝うこのイベントはある意味逆効果のような気もする。でも、他人が自分についてどう思うかなんて気にする必要はないっていう思いを表現するには良い方法だと思う」という意見が聞かれます。私も個人的に「同性愛に対する受容を祝う」のはなんとなくこのイベントの趣旨から外れているなと思います。きっと人々の意識はまだ進化の過程にあるのでしょう。
私が日本に住んでいたころ、人々が同性愛に対して示す態度をいまひとつ理解することができませんでした。人々はステレオタイプ的なゲイのイメージをテレビ番組やオカマバーで見て楽しんではいるようですが、個人的な経験からいうと、同性愛は真剣な会話の題材としては好まれていません。「同性愛は外国での話」や「日本にゲイはいない」といったコメントを、私は何度か耳にしました。特に男性は、知っている人がゲイだとわかったらとても気まずいかんじがすると言います。それでも日本は、多くの(西洋人から見ると時として極端な)サブカルチャーが自由に存在し発展している国です。同じように、日本の同性愛コミュニティーが繋がり表現していく余地はあると思います。(ある意味、より平和的な方法でそれが可能なのかもしれません。西洋社会においては、同性愛に対して、キリスト教(またはイスラム教)を背景とした反発が少なくありませんが、これらの宗教の影響は日本では大きくはありませんから。)今年のゲイプライドとユーロプライドは大成功でした。ありのままの自分に誇りを持てるように、多くの人にエネルギーや刺激を与え、だれもが自分らしく生きる権利があるという気づきを広めるものだったと、私は思います。今年のイベントの様子をご覧になりたい方は、公式YouTubeチャンネル「プライド・アムステルダム(Pride Amsterdam)」をぜひご覧になってみてください。
特派員
- マルタ・ ヒッキー
- 職業教師、イラストレーター
アムステルダムで生まれ育ち、研究のため日本に2年半住んだことがあります。オランダ―日本間の文化的なつながりやコミュニケーションにとても興味があります。その他、自転車に乗ることや、教師やイラストレーターとしての仕事、友達と新しいカフェに行ったりすることを楽しんでいます。2014年にライデン大学を卒業し(アジア/日本研究修士)、現在は日本人向けのオランダ語学習教材を作っています。この学習教材では両国間の文化的な違いも紹介しています。
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