正直なところ、フォード博物館は想像していたのとは全然違うものでした。博物館に車で向かう途中、何軒かの大きなビルに掛かった「Ford」の文字が目を引きます。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、デトロイトは自動車産業が盛んで、かつてはアメリカ合衆国の中でも最も大きく、人口の多い街の1つでした。「モーター・シティ」というデトロイトを指す名も、このような歴史に由来するものです。そしてそんな革命的な時代だった1903年にフォード・モーター・カンパニーを創業した先駆者がヘンリー・フォード氏でした。でも博物館に入って最初に展示されていた巨大ソーセージの乗った車に出迎えられてホットドッグになったような気分になり、ここが老若男女気軽に楽しめる場所だということがすぐわかりました。
この博物館では、フォードの歴史や歴史的価値を中心に扱うのではなく、いろいろなコレクションにわずかな背景知識を添えて展示してあります。アメリカの博物館では、作品の背景より展示するアイテムに重点を置いて展示するものなので、それは特別変わったものではないと感じました。たとえば、シカゴ美術館にはフランスの画家、ルノワールの絵画だけが展示された部屋がありますが、館内を歩き回って分かることはそれだけで、画家や印象派という様式、そして制作当時の意味合いなどの説明はまったくありません。また絵画には、表題と画家名、制作年が書かれて展示されているだけで、使った絵の具の種類などの説明はないのです。これはやや核心的な問題かもしれないとは分かっていますが、もしオランダの博物館へ行ったなら、どこでもとても詳しい(かつ教育的な)情報が得られます。そうすることで、芸術作品が本当に興味深いものとなるのではないでしょうか。フォード博物館に話を戻しますが、最初の期待とは違ったものの、その後はとても楽しかったです。ソーセージのすぐ後には、農業に使われていた「古い」自動車がいくつか展示されています。その何台かは1900年代のものですが、そのほかは1960年代頃のものですので、全部がとても古いというわけではありませんが、これらの機械が開発されたようすを見るのは面白いものです。それと同じコーナーに、「古い」人形の家やストーブが展示されています。その奥には古い家具やヘンリー・フォードが弾いていたイタリア製ヴァイオリンのコレクションが並んでいます。どの展示品にも共通しているのは、それらが革新的な製品だったということです。
館内のその他のコーナーは、アメリカのドライブや自由と正義(アブラハム・リンカーンと、黒人と白人の人種差別)、天空のヒーローたち(飛行機開発)、鉄道などといったテーマになっているので、多様なものを見て回れます。見どころが多く、「アメリカのドライブ」のコーナー内にレトロなレストランがあり食事をとることもできます! ご想像の通り、そこはとても広々としています。
というわけで概して、フォード博物館は車だけに絞った博物館というわけではありませんが、午後を費やすのにちょうどいい面白い場所です。特に小さいお子様のいるご家族には楽しいでしょう。でも私としては、ぜひアメリカの自動車産業についてもっとよく勉強してみたいと思います。
特派員
- マルタ・ ヒッキー
- 職業教師、イラストレーター
マルタは生まれも育ちもアムステルダムですが、日本語と日本文化の研究の一環で2年半の日本在住経験があります。オランダ人と日本人の間の文化とコミュニケーションのつながりについて、特に強い関心を持っています。現在はミシガン州ノバイに拠点を移し、文化の違いをより広く探究しようとしています。
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