私が初めてカフェに入ったときにまず驚いたのは、注文スタイルのカジュアルさ、そしてメニューの独特さでした。オーストラリアには、日本ではあまり見かけない「フラットホワイト(Flat White)」というコーヒーがあります。地元の方に勧められて以来、私もすっかりこの一杯の虜に。ただ、正直なところ、カフェラテとの違いは……今でもあまりよく分かっていません(笑)。でも、ふんわりとしたミルクの泡とエスプレッソのバランスがちょうどよく、私にはぴったりの味わいです。
ある日、「ロングブラック」というコーヒーを試してみたところ、日本のブラックコーヒーとは違った味わいでした。ロングブラックはエスプレッソにお湯を加えたものですが、日本の「いわゆるブラックコーヒーやアメリカン」とはまったく異なり、しっかりとした苦味が感じられます。コーヒーに慣れていない人にとっては、ちょっと挑戦的かもしれません。
また、カフェラテとカプチーノの違いについても、こちらに来て改めて知ることができました。カフェラテはスチームミルクが多くてまろやかで飲みやすく、カプチーノはふわふわの泡がたっぷりで軽い口当たり。仕上げにかけられるココアパウダーも印象的です。地元の人の中には、朝はラテ、午後には軽めのカプチーノと、時間帯で飲み分けている人もいるそうです。
シドニーでは「バリスタ」という職業がとても人気で、その技術の高さは世界的にも評価されています。Facebookのグループなどでは、バリスタ講習の情報が頻繁にシェアされており、日本人向けのコミュニティでもバリスタ講座が開催されています。実際にカフェで働いた経験がなくても、講習を受けて技術や知識を身につければ、採用のチャンスが広がると聞きました。
オーストラリアの多くのカフェでは、面接だけでなく「トライアル(試用)」という制度が一般的です。応募者は数時間実際に働いてみて、その働きぶりを見てもらい、採用されるかどうかが決まります。つまり、経験がなくても、やる気と基礎的な知識さえあれば、チャンスがあるのです。
SNSなどでよく見かけるハートやリーフ、動物の顔などを描く「ラテアート」は、一見簡単そうに見えて、実はかなりの練習が必要です。ミルクの温度や泡の状態、注ぐスピードや角度まで計算されていて、まさにバリスタの腕の見せどころ。不器用な私にはとても真似できそうにありません。
テイクアウェイ(持ち帰り)の場合、オーダー方法は、まずレジで注文と支払いを済ませ、名前を呼ばれるのを待つのが一般的なスタイルです。ミルクの種類を選べたり、サイズをカスタマイズできたりと、自由度が高い反面、最初はちょっと緊張しました。でも、いつもフレンドリーに接してくれるバリスタのおかげで、少しずつ慣れてきました。
日本では何十年もの間、毎日家でブラックコーヒーしか飲まなかった私ですが、ここでコーヒーの新しい楽しみ方に出会いました。家でも美味しいフラットホワイトを作ってみたくて、ついにミルクフローサーを購入。今では、自宅で泡立てたミルクを使って、ちょっと贅沢な一杯を楽しんでいます。
シドニーのカフェ文化は、単なるコーヒーの提供にとどまらず、人と人とをつなぐ場所として存在しています。実は日本ではあまりカフェに行く習慣がなかった私ですが、シドニーに来てからは、カフェ巡りが日々の楽しみになりました。

