• 2026.03.12
  • ブログ・リグーリア―誰もが楽しめる劇場
映画館ではなく、舞台演劇のような本格的な観劇と聞くと、イタリアの多くの大人たちは「自分には向いていない」と苦手意識を示します。
観劇は退屈で高価であり、一部の「選ばれた知識人」だけが楽しむニッチなものだ、という偏見が根強く存在しています。
しかし、こうした考え方は逆効果です。舞台芸術が提供する素晴らしい世界の楽しみ方を、若い世代が学べるよう後押ししていくことこそが重要なのです。

ジェノヴァには、この目的を体現する、色鮮やかでインスピレーションに満ち溢れた、魔法のような劇場があります。テアトロ・デラ・トッセ(Teatro della Tosse)は、子ども向け舞台の世界が形となって命を吹き込まれた、まるでもうひとつの世界のような場所です。様々な芸術表現を通じて舞台芸術の魅力を広く発信する文化拠点です。
午前の公演は学生や教員などの団体を対象としており、週末の午後の公演は子ども連れの家族向けに上演されています。
演目は午前・午後共通で、9月から5月にかけて上演されています。
午後の公演に先立ち、観客の存在が大きな役割を果たす、子ども向けのワークショップが開催されます。衣装の準備やリハーサル、紙細工作りなどのアクティビティを体験できるほか、観劇の際のマナーについても学ぶことができます。子どもたちにとって観劇は、魔法のような舞台の世界を体験することができる、素晴らしい機会です。観客席で過ごす時間は遊びの延長のようですが、そこには他の遊びと同じように、決められたルールや守るべき約束事があります。どんな遊びでも、与えられた役割を最後まで演じきることが求められるように、観劇においても「観客」という役割を、幕が閉じる瞬間まで演じきるのです。


子ども向け舞台の世界が形となって命を吹き込まれたテアトロ・デラ・トッセ


2025年でオープンから50周年を迎えたテアトロ・デラ・トッセは、街の文化的ランドマークとなっています。
子ども向けのプログラムのほかにも、あらゆる世代が楽しめる演目も上演されています。
この劇場を代表する最も有名な作品が「ユビュ王」(Ubu the King)です。美しく遊び心に溢れたポスターは、画家であり舞台美術家でもあるエマヌエーレ・ルッツァーティ(Emanuele Luzzati)が手がけたもので、現在ではルッツァーティ財団および劇場のロゴとしても用いられています。
シャガールを思わせる、平面的で色彩豊かなシュールレアリスムの人物描写がお好みなら、きっとルッツァーティの作品にも魅了されるでしょう。
ルッツァーティはジェノヴァが誇るイラストレーターで、本の挿絵や演劇のために数多くの作品を手がけました。
彼の芸術を広めるために設立されたカーサ・ルッツァーティ(Casa Luzzati)は、歴史の面影が今なお色濃く残る街の中心、ドゥカーレ宮殿(Palazzo Ducale)の中庭に位置しています。
ここでは多彩な学びのプログラムが用意されていて、館内では様々なワークショップが開催されていることから、多くの学校が訪れています。パンデミックの最中である2021年6月に開業したこの施設は、オープン当初から文化の発信地として、希望と創造力を育む場所となってきました。美術館としては小規模ながらも、アニメーションやイラスト、演劇、グラフィックなどの分野における国際的な作品を丁寧に紹介しています。
カーサ・ルッツァーティは、ジェノヴァ市の支援のもと、エマヌエーレ・ルッツァーティのレガシーを紹介するとともに、ルッツァーティ財団の主導により、ルッツァーティのコレクションや作品を発信する拠点となることを目指しています。
ルッツァーティの功績は、子どものような無邪気さと皮肉に満ちた想像力が生み出す、誰もがその住人になりたくなるような世界を創り出した点にあります。
カーサ・ルッツァーティを訪れると、壁一面に飾られた作品や神秘的な生き物に驚かずにはいられません。
館内には1980年代のテアトロ・デラ・トッセの演劇公演を紹介する部屋や、人形制作が行われているアトリエも設けられています。
私は、人気イベントとして知られるジェノヴァのヴィンテージ・マーケットの日にここを訪れました。マーケットは独特な雰囲気をまとった、どこかシュールな空間でしたが、その話はまた別の機会にご紹介したいと思います。




カーサ・ルッツァーティ

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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