• 2026.04.10
  • ブログ・リグーリア―終身雇用は永遠の安定?
「ねえ、ケッコ。大きくなったら何になりたい?」
「終身雇用の仕事がいいな」
非常に有名なイタリアのコメディ映画に登場するこのセリフは、イタリア人の心の中に深く根づいた「終身雇用」に関する考え方を見事に端的に表しています。
「終身雇用」に対するこだわりは何世代にもわたり受け継がれてきましたが、現在は薄れつつあり、私たちとしてはできる限り、この価値観から距離を置きたいと考えています。
ところが、イタリアでは終身雇用は地上の楽園のように捉えられ、安定や福利厚生、安心できる日々の繰り返しを約束してくれるものと見なされています。
でも、本当にそうなのでしょうか。
終身雇用へのこだわりはイタリア特有のものであり、必ずしも安定しているとは言えない経済状況の裏返しとも言えるでしょう。実際、10年以上同じ仕事に就いている人の割合は、欧州でも2番目の高さを示しています。

特に私たちのようにイタリアを愛する者にとっては、認めるのは辛い現実ですが、何かがうまく機能していません。さらに残念なことに、機能していないのは私たち自身の考え方だと言わざるを得ないようです。私たちが抱いている(そして私たちの中に刷り込まれてきた)人生観や、人生を唯一無二で充実した、さまざまなチャンスに恵まれたものにできる可能性に対する捉え方に問題があるのです。
では、その代わりに私たちは何を選択しているのでしょうか。ただ流されるままに生き、決して100%確実ではない「安定」を求めて、単調な繰り返しに縛られる生活を選び、人間らしく働くのではなく、何かに奉仕する機械のように暮らしているのが現状です。
ある調査によれば、終身雇用(特に公務員)の職は、今なお多くのイタリア人が憧れる就職先の一つです。
この国では終身雇用は長年のこだわりであり、特にこれまでの世代には強い執着が見られました。けれども、世界では驚くべき進化が進んでおり、そうした変化を取り入れないこだわりは時代遅れになっています。
率直に言えば、今必要なのは一歩踏み出す勇気です。仕事のチャンスは目の前に無数にあるわけですから。
人はみな、自分の人生の設計者であり、世界ではあらゆる人材が必要とされています。活動的な人、起業家精神のある人、毎日同じ場所で同じ仕事をこなすことに喜びを感じる人など、多種多様な人々が求められています。
変化に適応するために柔軟性が不可欠な時代においても、多くのイタリア人は依然として保守的です。終身雇用は今なお「憧れ」であり、一生かけて追い求めるものだと強く信じています。
次に紹介するのは驚くべきデータです。安定した仕事を最も必要だと感じているのは、18~24歳の若者で、この年代層の81%を占めています。本来ならリスクを厭わず、探検や旅に出たり、さまざまなことを学び挑戦したりすることに前向きなはずの年代が、最も保守的な傾向を示しているのです。
確かに、イタリアで起業するのはかなり意欲を削がれるものであるのは事実です。法外な税金や煩雑な手続き、法的制限など、数々の障害が立ちはだかります。
また、終身雇用が得られれば、毎月の給与が安定するだけでなく、年末には賞与として「13か月目」「14か月目」の給与が支給されます。
加えて、終身雇用の契約を結べば、保険やさまざまな福利厚生に加え、失業手当といった社会保障にいたるまで、あらゆる恩恵を享受できます。
ただ残念ながら、一部の人が病気やストレス、怪我を装って働かずに給付を受け取るなど、こうした制度を悪用していることも事実です。
失業手当は、雇用期間に応じて最長24か月間の受給が可能です。
世界的に不安が広がるこの時代に、人々が安定や職の保障を求めるのは、理想的とは言えないまでも、理解できることではあります。
しかしその裏では、残念ながら、かつて職人工房や「Made in Italy」文化を中心的に支えてきた家族経営の企業が衰退しています。時が経てば明らかになるでしょうが、大企業への就職を選ぶ人は増加の一途にあり、イタリアは米国型の就労モデルに移行しつつあります。私は、こうした流れは望ましくないと考えています。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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