- 2015.04.23
- 文化を創る!? リンツ市の挑戦
私が住んでいるリンツ市へは、毎秋、世界中から多くの人々が訪れます。人口は19万人、けっして大都市ではなく、世界遺産もありません。では、何が人々をこの都市(まち)へと惹きつけているのでしょうか?戦後、リンツ市は、鉄鋼の街として、テクノロジーはあるけれど煙たく文化のない都市という印象だったそうです。両隣には、世界遺産で有名なウィーンとザルツブルク。過去の文化では到底太刀打ちできません。ならば、「未来に向けて蓄積される文化を創るしかない!」と生まれたのが、“アート、テクノロジー、社会”のスローガンと、これに基づくフェスティバルの開催でした。最先端のアートとテクノロジーを単に追うだけでなく、当時から、その社会的インパクトを探求していた点は驚きです。●写真1:1979年の様子 1979年、最初のフェスティバルはドナウ川沿いで行われた実験的屋外イベントから始まりました。住民が窓の外にラジオを置いて、ブルックナーの交響曲を流し、至る所に「音の雲」を創る。屋外のドナウ川沿いに巨大スピーカーを設置してコンサートを開催する。アメリカからヒューマノイドを招いて市長が出迎えるなど。どれも当時としてはかなり画期的な試みでした。その後、毎年、最先端のテクノロジーとアイデアを駆使し、同時に市民に開かれかつ巻き込みながら、動員数10万人規模のフェスティバルへと発展、文化を創るに至りました。これが、「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」であり、世界中から多くの人々を惹きつける理由です。●写真2:フェスティバルの中心、アルスエレクトロニカ・センターは、年代を問わず楽しめる体験型施設。通年営業(月曜休)です。 市も、駅舎をガラス張りに建て替え、閉鎖されたタバコ工場をクリエイティブ産業の拠点にリノベーションするなど、“未来”を意識した都市づくりに努力しました。2009年には「欧州文化首都」に、2014年にはユネスコから「メディア・アートの街」にも認定されました。世界最大級のメディア・アートの祭典「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」は、毎年9月に開催されます。今年は、9月3日(木)から7日(月)までの開催です。ウィーンやザルツブルグから電車でわずか1時間。古都から未来都市へ、あなたも“時空を超えた旅”をしませんか?