ドイツのキッチンブランドがヨーロッパで成功し始めたのは1950年〜60年代で、ドイツ経済が急成長する大きな担い手となった。現在では76社もあり、輸出率もかなり高い。
ドイツに来て一番驚いたことは、賃貸物件では一般的にキッチンがついていないこと。なぜかというと、机やベッドなどの私物同様、キッチンは各自がこだわりの所有物としてみなされているからである。
色、スタイル、収納、構造、グリップ、天板などを自由に選び、オーダーメードでシステムキッチンを作ることが主流だそうだ。
DIYの得意なドイツ人達はいとも簡単に自分で取り付ける人が多いので、器用だなぁと感心する。だから引越の度にマイキッチンを移動するのは苦にならないようである。
もちろん、引越先の寸法と合わない時はキッチンを置いて行くこともあるし、駐在員など3〜4年の滞在者用に家具付きのアパートも多いそうなので、選択の余地はあるそうであるが…。
そして、ドイツはマイスターとエンジニアの国。この特性は、自動車界のみならず、バスルームやキッチン業界にも恩恵をもたらしている。
キッチンは複雑な製品で、取付金具の品質によって大きく左右される。例えば、引き出しを勢いよく閉めても最後の2cmくらいで速度が弱まり、静かに閉まる金具はとてもよく計算されているし、コーナーの解決方法も回転式のものや棚が手前に出て来るものなど、楽に多くの収納ができる良いアイディアに感動する。
最新の棚は、手をかざすと全自動で開閉するので驚くばかりである。
キッチン本体のほか、キッチンを構成する重要な部分である水道蛇口のハンスグローエ(Hansgrohe)、電化製品部門ではミーレ(MIELE)、元は鉄製品が得意なガゲナウ(GAGGENAU)、バーデン地方のネフ(NEFF)は高価であるが高品質。ガゲナウ製品が入ったキッチンは黒と大変シック。オーブンやスチームオーブンレンジは目の高さに設置し、屈まなくても調理できる実用的さはドイツ人らしい。
メガキッチンは、2階建ての広大な敷地(床面積 6000平方メートル)に約200種類ものキッチンが展示されているため、自分の好みのキッチンに触れて選ぶことができる。その点、日本のシステムキッチンはとても高価で手に届く人が限られているため、古いプロペラ式の換気扇があるアパートも少なくなく、自分のキッチンへの関心のなさが感じられる。是非ドイツからシステムキッチンへのこだわりをもつということを日本でも広めて行って欲しいと常々願う。