• 2015.04.23
  • いつも列車で
ニューヨークのグランドセントラル駅は国際的なランドマークです。映画の有名なシーンや観光ガイド、抗議デモや歴史的資料など、さまざまな映像や画像を通して世界中に知られています。また、近郊に住む人々にとってはニューヨークの玄関口でもあります。乗降客を迎える快適で広々としたこの駅を通ると、郊外で暮らす私達もアップテンポのニューヨークへとスムーズに入っていくことができます。

ニューヨークに住んでいると勘違いされるほど、アーティストである私はニューヨークによく足を運びます。メトロポリタン美術館でおもしろそうな展示を見つけたときや、最新のアート作品について他のアーティスト達と一晩語り合うため、あるいは、遠方からはるばるニューヨークにやってきた古い友人に会うため、私は列車に飛び乗ります。

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私のように2都市間を移動する生活は、アーティストの世界では珍しいことではありません。多くのアメリカ人は1つの都市で暮らし、職場も近く、平日の夜や週末も遠出をせずに近所の友人たちと過ごします。車中心の生活なので、めったに列車には乗りません。

私が住んでいるニューヘブンはニューヨーク行きの通勤列車が頻繁に走っているため、ライフスタイルに合わせて郊外を生活の場として選び、列車で片道約2時間(往復約4時間)かけて職場に通う人も珍しくありません。列車の中での過ごし方は、コーヒーを片手にノートパソコンや携帯デバイスを覗き込むのが定番で、朝の通勤時間には、会社にいるのと変わらない光景が見られます。新しい列車にはコンセントも完備され、通勤客はデバイスを接続して充電しながら作業できます。

このような充実した車両サービスは通勤客に向けたものですが、非通勤客の私達も便乗させてもらっています。列車は1時間に2往復しますが、ラッシュアワーには本数が増えます。

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ニューヨークまでの移動中には、旅の楽しみも味わえます。忙しい日々の暮らしの中で、いつの間にか失われてしまう想像力も、日常生活にはない空間に身を置くことで取り戻すことができます。窓の外を眺めたり、他の乗客の姿を見たり、読書や書き物、考え事を織り交ぜたりします。

また、その道のりのそれぞれが、まったく違う感覚をもたらしてくれます。まず、ニューヘブン駅に行くと開放感を感じます。ある小さな駅には、アメリカの鉄道黄金時代を彷彿とさせる木製のベンチや飾り天井がいまだにそのまま残っています。私の故郷、ニューヨーク州ロチェスターにもかつて同じような駅がありましたが、すでに今風の駅に変わっています。

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そして、列車に乗って、美しい郊外の風景、小さな街、アメリカが工業国だった頃の名残などを見ていると、澄んだ気持ちになります。コネチカットはアメリカの州の中でも特に、各都市に違いがあります。低所得者層の街から富裕層の住む街へ移動すると、景色が大きく変わります。それでも、みんなが同じ列車に乗り、一緒に座り、全てを受け入れています。

列車の移動時間は落ち着いて作業に没頭する時間でもあります。ノートパソコンは車内の至る所で見られます。もはや、それは私達の一日の一部になっています。コンセントから充電できるので、安心して作業に集中できます。

そして、いよいよグランドセントラルに到着すると、乗客の大半はメインホールに直行し、時計に迎えられます。

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誰もが知っているように、グランドセントラルの時計はただの時計ではありません。待ち合わせ場所であり、案内所でもあります。列車に慌てて乗り込むときやラッシュから降りてきたときは皆携帯電話や腕時計を見る時間もないので、もちろん、時間も確認します。この時計は目印にもなりますが、約束に間に合うかどうかも教えてくれます。

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一日の終わりの帰路にはまったく別の世界を見ることができますが、それについては、またの機会にしましょう。

特派員

  • シンシア・ ベス・ ルビン
  • 職業C B Rubin Studioを運営する独立系アーティスト

アメリカ・コネティカット州ニューヘブンを拠点に、ニューヨークからロードアイランド州ナラガンセット湾まで制作の場を広げているニューメディアアーティスト。静止画にとどまらず、動画と拡張現実を取り入れ、現在は肉眼では見ることのできない水中の微小な生命を表現することが作品の重要なテーマに。文化の層が目に見える環境と密接な関係にある現在の都市生活において、目に見えない環境に隠れた生命を認識することは必要不可欠です。芸術的な観点から、それを多くの人々に理解してもらうことが目下の課題です。

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