- 2015.08.14
- ベジinベルリン
日本ではまだまだ少ない菜食主義者ですが、ベルリンでは全く珍しいことではありません。生活水準が高く、倫理の問題に熱心な西欧諸国では、特に都市部・若年層において菜食主義が多く見られます。そのため、ベルリンの飲食業や小売業も菜食主義者をターゲットにしたものが少なくありません。古代ギリシャでは、プラトン学派に菜食主義者が多かったのに対し、ストア派やその他の学派には殆ど見られなかったと言われています。現代の菜食主義の最も主流な動機は、動物の権利や生命倫理ですから、思想によって菜食主義者の多い層があります。実感としては、教育レベルの高い若年層から、少し懐に余裕の出てきた30代にかけて多く、特に左派系の若者が集まるイベントやデモなどに行けば、炊き出しが菜食のこともあります。この10年で菜食主義者が倍増していることや、完全菜食主義のスーパーマーケット・チェーンの所在地が、少し家賃の高いおしゃれな地区を狙っていることからも、菜食主義者の層を窺い知ることが出来ます。以上を纏めると「都市・左派・思春期が90年代以降」が菜食主義者のキーワードな気がしています。菜食主義者と一口に言っても、卵や牛乳といった動物を直接殺さない動物性食品を許容するベジタリアン、生産過程で動物に苦しみを与える卵や牛乳も口にしないビーガン、革製品のみならず羊毛まで身につけない徹底ぶりの人など、その基準は人それぞれです。パンやチョコレート、チーズなど、牛乳を使った食品を挙げれば切りがなく、グミなどの菓子類もゼラチンを使用しています。サニタリー用品や化粧品も動物性素材を使用したものは少なくありませんし、開発過程で動物実験がされているものも多くあります。拘りだすと切りがありませんから、それなりに知識を集める時間と、多少の割高な出費を覚悟する必要があります。それでも完全菜食主義のビーガンはドイツ全体で約60万人、ベルリンでは9000人程と推定されています。広義のベジタリアンも含めると、ドイツ人口の4%弱が菜食主義者と考えられています。それに加えて、菜食主義ではないものの、健康に良いという理由で肉食を控える仮面菜食主義者もいますから、飲食業界も放っておけません。近所をふらりと一周するだけでも、完全植物性を謳ったスーパーマーケット、レストラン、ピザ屋、地中海料理屋とあり、普通のレストランでも、菜食主義者向けの料理やメニュー上の注意書きなどが用意されています。日本では外食産業が発達している割には、完全菜食主義の店は少なく、普通の店で豆腐サラダを頼んでも鰹節が載っていたり、野菜スープにも動物性の出汁を使っていたりと、菜食主義者の来店を前提としていないことが多いように思います。今後、外国人観光客も日本人菜食主義者も増えていくことが予想されますから、ちょっとしたビジネスチャンスかもしれません。