昨年、アムステルダムやベルリンの特派員さん達から報告があった『ゲイ・プライド・フェスティバル』ですが、今年のマドリードでは、1977年スペインで初めて行われたゲイ・パレードから40年周年記念ということでひときわ大規模に行われることになりました。
性的指向における少数派や性同一障害者、いわゆる LGBTの人達がありのままの姿で生活できる社会を目指すという思いを共有する人々が世界中からマドリードに集う、それが『World Pride Madrid 2017』です。6月23日のオープニング・セレモニーから7月2日の閉会式まで、実に10日間の開催、約200万人の参加が見込まれる、この町にとって今年一番のビッグ・イベントになるでしょう。なんと地下鉄まで24時間営業になるとか。オフィシャルHPは
http://www.worldpridemadrid2017.com/en/ です。マドリード市当局や州政府も公式後援団体として積極的に参加、そしてプラド美術館もマドリード州政府協賛のもと新企画を打ち出しました。それは、同性同士の情愛の表現や、その性的指向で差別、迫害を受けた芸術家、また本質とは異なる外見を持つ現実や、神話の中の同性愛などが反映されている作品30点を常時展示の中から選び、それぞれを4つのテーマに分けて巡回できるものです。期日は6月10日から9月10日まで。題名は“La Mirada del Otro/The Other’s Gaza” “他者の視点”とでも訳せるでしょうか。
パンフレットの表紙のライオンは19世紀に活躍したフランスの女性芸術家ローザ・ボヌール作“エル・シド(1879 )”です。幼少期“自分が一番男の子だった”と言うくらいお転婆で、短髪にして、ズボンをはき葉巻を吸うという、当時の女性としては破天荒な生き方を貫いた人でした。そしてフランスの最高勲章であるレジオン・ドヌールを叙勲しています。巡回展の内容の一部をそれぞれのテーマに沿ってピック・アップしてみると
〇不滅の友愛Amistad inmortales/Immortal Friendsローマ帝国5賢帝の一人、セビリア生まれのハドリアヌス皇帝(134 d.C.頃ローマの工房 )とその寵愛を受けながら夭折したアンティノウス(131-132 d.C.頃ローマの工房)の胸像 *プラド美術館公式HPより
〇欲望を追求してPerseguir los deseos/Pursuing Desireモナ・リザ(1503-1519 レオナルド・ダ・ビンチ工房)レオナルドの愛弟子が、師匠の作品と同時進行で描いたと言われています。*プラド美術館公式HPより
〇偽りの外見Engañosas apariencias/Deceptive Appearances眠るヘルマプロディートス(1652 マテオ・ボヌッチェリ)商業神ヘルメスと愛の女神アフロディーテの息子で、女性と男性が共存しています。これは17世紀当時、スペイン王室の美術部長だったベラスケスがイタリア出張の際に購入し持ち帰った作品です。*プラド美術館公式HPより
〇神々の如く愛するAmar como los dioses/To love like the Godsガニメデスの誘拐(1636-1638 ペドロ・パブロ・ルーベンス)本展カタログの表紙と裏表紙。ゼウスにさらわれるトロイの王子ガニメデス。
パンフレット記載のルート・マップを手掛かりに作品を見つけ出すのも面白く、大巨匠達の喧騒から離れた展示室の比較的静かな雰囲気のなかで鑑賞することが出来ます。・・・・・と前回に続いてプラド通信でした。余談ですがマドリード市役所は街中の交差点72か所の歩行者用信号を特別仕様に変更しました。イベント終了後もそのまま使用するとの事です。