• 2020.08.31
  • エルバ島を見るまで私に不可能は無かった
今夏のイタリア人のバカンスは、コロナウィルスのせいで調子が狂わされている様子。

8月の今になったからこそ、ヨーロッパの他国へ自家用車で出かけることは可能になってきているものの、1、2ヶ月前までは隣国のオーストリアなどはイタリアとの国境を頑なに閉ざしたりしていて、何処へ行っても「イタリア人はお断り」の空気が流れていたのでした。

それゆえにイタリア国内でのバカンスが強く推奨された2020年。そんな状況の中で私が選んだのは、トスカーナ州にあるエルバ島。海好きなイタリア人には楽園として崇められている島。


この時期は、ミラノから半日かかりのドライブ。最後にマイカーをフェリーに乗せて約40分間後に島に到着。港から出て5分とかからないのに、緑に覆われた山や谷に入り込むことになり、La macchia mediterranea(地中海灌木地帯)と呼ばれる植物群に覆われていることが印象的です。


ロシアでの戦いで敗戦したナポレオンが島流しの刑として送られた先が、このエルバ島。
Eble Was I Ere I Saw Elba(エルバ島を見るまで私に不可能は無かった)ナポレオンが残したと言われている回文。


こんな楽園が、おしおき?しかも、ナポレオンは統領として復活をはかるため、300日も経たないうちに島から脱出したそうですから1年も経たずに去っていったわけです。彼の人柄とその精力的な活動ぶりが伺えるのが島での彼の暮らし方。エルバ島の彼の住まいは質素で、5キロ離れた所にある別荘も質素。街路樹やワイン製造用の葡萄を植樹させ、劇場や病院も建設させ、エルバ島の経済力を高める貢献をしたそうです。エルバ島の国旗に3匹のミツバチが描かれていて不思議なシンボルだなぁ、と思っていたらナポレオンが「ミツバチのように勤勉に働くべし」という意味を込めた印だとか。


エルバ島の「国旗」と言うと変な印象ですが、エルバ島の人は自分たちの島を一つの国と考えていて、私が乗った船の船長さんが「晴れた日にはイタリアが見えます」と説明したことからも、「イタリア」と「エルバ」を区別していることを興味深く思いました。

ところでフェリーが乗り入れるエルバ島のメインの港は、Portoferraioと呼ばれ「鍛鋼の港」と言う意味になります。その由来として、エルバ島には炭坑採掘場がいくつもあるわけですが、どこも見学可能です。今は休止中とは言えどもいざとなったら生産再開出来るんだ、と住民が言っていました。戦争が勃発したら、エルバ島は兵器生産の重要な場所になり得る、とも。こんな冗談めいた説明も半分本気なので、こういう意識はナポレオンの置き土産かな?

さて、エルバ島の周りには、エルバ島よりも小さな島がいくつかありますが、その中で私が一番興味を持ったのが、モンテクリスト島。あのレ ミゼラブルのストーリーに出てくる島。が、モンテクリスト島の見学は、極めて難しいことがわかりました。年間たったの2000人だけの訪問に限られている上、2020年の予約はもう売り切れ。いずれにせよ、詳細を読むと見学のための準備を用意周到にしていくべき場所であることがわかりました。

いつか見学を実現出来るかしら?

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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