街中の、それこそ何気ない小さな靴屋さんでも素敵なデザインの靴が見つかるイタリア。住居内も靴を脱がずに土足の習慣を残しているからなのでしょうか、服装と靴の合わせ方が上手なのもイタリア人なのです。頭から足のつま先までのコーディネートを完璧にして現れるイタリア人を見るとイタリアにいるのだから私もセンスを磨いて手を抜かずにお洒落しなくては、と自分を戒めたりします。エレガントでドレッシーな雰囲気にまとめている時もカジュアルにしている時もスポーティーに決めている時も、イタリア人は色の取り合わせやスタイルの一貫性などをよく考えていて、いつも足元まで手を抜かずに洒落込んできます。ファッションにそんなに気を使っているようには見えない人でも、彼女のお家に招かれた時に見て知った、持っている靴の多いこと!100本の足を持つ虫ことヤスデのようになれたら女性は更にハッピーになれそうだよね、と何十足ものの靴を抱え込むイタリア人女性をイタリア人男性はからかったりもします。
さて、私が持っている靴の中では黒のハイヒールが圧倒的に多いです。それは私が演奏家だからでしょう。ランニング用スニーカーも1組。快適に走れるならどんなスニーカーでもいいじゃない?と色やデザインを吟味せずに、目をつぶったまま手に取ったスニーカーを購入したと言っても過言ではなく、邪道だとスニーカーマニア達に叱られてしまうかもしれません。
実際に「このナイキ、格好いい。こっちのデザインもいい。欲しいなぁ」とイタリア人青少年達がため息をつきながらつぶやくナイキシューズを覗いてみたら7万円とか8万円の値札がついていて、スニーカーにそんな大金をかけた事が無い私は驚きの余りひっくり返りそうでした。
「そんなことで驚いているようじゃぁ、君はスニーカーに関して相当なウブだね」と言った友人は、ミラノのドロップアウトに行ってごらんと私に薦めました。ドロップアウトは、リミテッドエディションのスニーカーやストリートウェアのリセラーショップ。1足ずつ、1着ずつ透明なカバーに丁寧に包まれて保護されている商品ばかりで恐れ入ってしまいます。更に幾つかは非売品でその中で1番話題になっているのは、ナイキのエアー ジョーダン1 シャッタード バックボードというスニーカー。珍しがって写真を撮りに入店する買い物客、旅行客などが絶えないそうです。
経緯は店のオーナー、アンドレアさんがこのスニーカーの購入後、家にたどり着いて箱から取り出したところ何かが変なのです。よくよく見ると1足の片側だけナイキのスウッシュマークが逆さになって縫われてしまっていた。
これではリセラーできない、、、不良品という事で購入したお店に戻って取り替えてもらおうと思ったのですが魔が差してSNS反応を見ることにしたところ、ポジティブな感想が見る間に膨れ上がっていくだけでなく「3000ユーロで売ってくれ」などと言う買い手さえも出てくるではありませんか。それならこのスニーカーはもはや不良品では無くてアートという手応え。更にeBayに出品してみたところ最終的に148.000ユーロの値段(2千万円近くの値段!)がついたそうです。
失敗と成功も紙一重?