コロナウィルスの到来までイタリア人にはマスク着用の習慣はなかったのですが、実はイタリア人とマスクは意外に親密な関係にあるのです。
ですが顔を覆うマスクと言っても、衛生上のマスクではなくてイタリアでは仮装用の仮面マスクが深い歴史を持っています。その影響なのでしょうか、ウィルス対策用のマスクも医療品マスクよりも、自分のオリジナリティーを主張したマスクを着用する人がとても多く、ファッションセンスやアイデンディディーのこだわりをマスク上にも見せています。
イタリア各州にはその州を象徴するカーニバル用の仮面があって、日本でも知られているのは特にヴェネツィアのカーニバルとその衣装と仮面ではないでしょうか。ヴェネツィアを観光された方なら、選ぶのに困ってしまうくらいの数々のデコレーションの仮面を思い出されることでしょう。
白い衣服をだらしなく着て鷲鼻がついた黒い仮面をかぶっているのがナポリのプルチネッラで、印象的で特徴的なので一度見たら忘れられない格好。召使いのくせに飲み食いが大好きで怠け者という役柄が特徴的なのに、逆の性格も披露する二面性を持っている不思議な人物像。
面白いのがボローニャ。お医者のバランゾーネがボローニャの象徴的人物であるのには、ボローニャがヨーロッパ最古の大学がある町で、世界初の人体解剖が行われた大学だからでしょう。今では観光スポットの1つとして解剖学室を見学できる興味深い場所となっています。このお医者のバランゾーネはお調子者で間違いだらけの法律、哲学、天文学、文法などを喋りまくる人物像だとか。
ミラノは、本当はドメニコという名前だけれどメネギーノと呼ばれる良い人柄で機知に富んだ使用人が象徴的人物像。それだけではなくてロンバルディア州のシンボルとして、アルレッキーノも存在していますが、こちらの人物像は、欲が深く、いつも借金に見舞われているので絶好のチャンスを狙って動き回るズル賢さがあって、でも殴られ役なのだとか。アルレッキーノような人とは言われたくないですねぇ、、、
サルデーニャの象徴的人物像のことは聞いたことが無かったのですが、聞いた途端に妙に納得してしまったのは、サルデーニャは牧羊が盛んな島なので、この人物像マムトーネスが黒羊の毛皮を羽織っていること。悲しげにしているのが特徴だとか。ところで このマムトーネスに変身して1年に1度の神秘的儀式がサルデーニャ島内で行われるのだとか。黒いグロテスクな仮面をかぶって、黒羊の毛皮をまとい、いくつもの重い銅のカウベルを背中に背負い、ワサワサとした不気味なダンスを踊るそう。この神秘的儀式は昔から続き起源さえもわからないとか。そういえば、サルデーニャ島にはヌラーゲと呼ばれる住居のような遺跡も残っていて、色々な学説が飛び交ってはいますが結局何のために作られたのかはっきりしてないとも言われています。
こうして各地域のシンボル像を見て行くと欠点を誇張したようなキャラクターの持ち主が目立ち、自分の出身地や地域を美化して表現したい私にはなかなかそう簡単には共感できないのですが、世紀を超えて発展をした文化の中に、奥深さと面白みが見出せるものなのです。