• 2017.01.17
  • ロッテルダムを夢見て
冬は、新しい年に訪れたい場所をあれこれ楽しく考えながら、古い旅行ガイドをめくったりする季節ですね。遠方の魅力的な場所についての記事を読みふけるのも楽しいですが、自分の住む街の近郊を訪れるのもまたよいものです。私の場合、地元に近い最大の都市ロッテルダムがそういった場所のひとつです。オランダについて書かれた日本語の旅行ガイドを目にしたとき、ロッテルダムのどんなスポットが日本人読者に紹介されているのか気になりページをめくってみましたが、いまだにその紹介スポットが旧港やキュービックハウスだけだったというのは驚きでした。現在のロッテルダムはそれ以上のものに発展しており、市内にあるたくさんの魅力的なスポットについてもっと知ってもらうべきだということを再認識しました。

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2016年はロッテルダムの街にとって特別な一年でした。それは、国際港で有名なこの街が、第二次世界大戦による破壊後、復興75周年を迎えたからです。「Rotterdam Celebrates the City(祝・ロッテルダム)」というテーマでさまざまなイベントが企画され、長い歳月をかけて成し遂げられた街の復興を祝う一年となりました。なかでも最も際立ったのは、中央駅前に作られた180段の巨大階段で、第二次世界大戦直後にできた重要な建築物の1つであるGroot Handelsgebouw(卸売ビル)まで続いています。電車で市内に入ると、勾配のある屋根をもつ超近代的な中央駅とともにこの建築物がまず目を引きます。高層ビルに囲まれた広々としたエリアがまず目に飛び込んでくるので、他のオランダの街とはだいぶ異なる印象を受けるかもしれません。ロッテルダムは現代的で、よく整備された落ち着いた雰囲気の街で、(オランダのことわざにもあるように)おしゃべりよりも勤勉さを重視する人が多いようです。ロッテルダムは初めて行く人にとってはあまり楽しくない街だという話を聞いたこともあります。ロッテルダムは行ってすぐ楽しめるようなところではないのですが、熟知すれば満喫できるので、街に精通した人と一緒に散策することをお勧めします。古い旅行ガイドに載っているルートに従うことなく、新しいものに目を向ければ、心に残る素晴らしい場所にきっと巡り会えるでしょう。

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私の定番のロッテルダム散策はヴィルヘルミナプレイン駅から始まります。この広々とした地下鉄駅の内部から大きなエスカレーターに乗ると、有名なスワン型のエラスムス橋とウィルヘルミナピアの交差地点まで連れていってくれます。桟橋を歩くと、「ジャバ」や「セイロン」といったかつての貿易先の製品名が書かれた古い倉庫が並んでいます。これらはロッテルダムに現存する希少な戦前の建築物で、修復されてアパートになっています。今では桟橋にあるこれらの古い倉庫群の脇には最新の超高層ビルが立ち並び、なかには左右非対称の形をした一際目立つものなどもあります。このような建築群がロッテルダムのスカイラインを彩り、美しい夜景を作り出しているのです。スカイラインはカラフルな鳥の形をした橋に始まり、デ・ロッテルダムと呼ばれるオランダ最大のガラス建築物、ワールドポートビル、格式高いホテル・ニューヨークなどが連なります。ホテル・ニューヨークは戦前の建築物で、19世紀に、よりよい生活を求めてアメリカへと渡航したオランダ人たちが利用していたオランダ・アメリカ・ラインの本社がかつてあった場所です。行き来する数多くの船や人々を見守ってきたこの建物は、マース川のほとりに誇り高くそびえ立っています。特にブルータワーやビル上部の時計が目を引きます。

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独特なインテリアが施されたホテル・ニューヨークのカフェや、映画とジャズの独創的な劇場「ランターレン・フェンスター」などでのひとときを過ごしたら、近くにある別の島へ探索に行きましょう。ホテル・ニューヨークと水上タクシーの波止場の横には、恋人たちの南京錠がたくさんかかった歩道橋があります。この橋を渡ると、ここ数年の目覚ましい発展で街の人気スポットとなったエリアを探索できます。港湾部の家屋や旧倉庫は老朽化していましたが、このエリアは今では緑に囲まれた心地よい公共の広場に改修されて、修復された歴史的建築物のかたわらには、カフェやレストラン、小規模な店舗が出店しています。広場では毎月、骨董市が立ち、地元の人々が中古の陶器やキッチン用品、家具をはじめ、手作りのクッキーやアクセサリーまで、さまざまなものを並べて売っています。この骨董市で、古いレコードから流れる穏やかな音楽に耳を傾けながら、鮮やかな色のカーテンやおもちゃ、椅子などが、絨毯の上に広げられたり、古いワーゲンバスで販売されたりする様子を見ていると、時をさかのぼったような気分になれます。

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市場で古いものや新しいもの、そして独創性を堪能した後は、最大規模の倉庫を見に行きましょう。大きな天井をもつこの産業施設は、かつてはスパイスや金属用の倉庫として利用されていましたが、現在はフェニックス・フード・ファクトリーとなっています。ここでは、フード・ファクトリー内で製造されたロッテルダムビールなど、ここにしかないお土産が手に入ります。本屋には、大きなフォトアルバムやカラフルな絵本などの珍しい品もあり、ロッテルダムに関するオランダ語や英語の本、すべてロッテルダム方言で書かれたミッフィーの本などもあります。本屋周辺には食べ物の露店が多く出ていて、いい匂いが立ち込めています。フード・ファクトリーには食料雑貨だけでなく、有機野菜やパン、チーズ、肉なども売っています。焼き立てパンにフムスを添えたものやモロッコ風タパスなどのロッテルダム風のランチを楽しんだら、デザートには「ストロープワッフル」の甘い香りに誘惑されることでしょう。このオランダ名物のワッフルはシロップ入りがオリジナルですが、このフード・ファクトリーでは、レモンやチーズ、ピーナッツバターなどさまざまなフレーバーが味わえ、多文化的で革新的なロッテルダムの街にぴったりの刺激的な食体験ができます。

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ウィルヘルミナピアから水の流れにそってマース川の対岸に目を向けると、美しい白い建物が目を引くワールドミュージアム(世界中から集められた常設展コレクションで有名)、港に浮かぶ伝統的なオランダ風帆船、そして展望台のあるロッテルダム最大の公園など、楽しいスポットが一望できます。この他にも見どころはたくさんあります。ウィルヘルミナピアやカテンドレヒト地区は、ロッテルダム散策における見どころのほんの一部ですが、徒歩で回ることができ、さらには想像の旅を楽しむこともできます。川の流れをいつも身近に感じながら。

特派員

  • リサンネ・ クライナン
  • 職業通訳、翻訳業

私はオランダの港町であるロッテルダムの郊外に住んでいます。日本語、日本文化や芸術の勉強のために2年間日本へ留学しました。そこで、国境や文化を越える様々な表現方法から生まれた人と人、人と場所の繋がりに感動しました。日本で経験したこと、感じたことを振り返り、新鮮な視点からオランダでの日常を見るようになりました。

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