• 2021.01.08
  • クソッ!クソッ!クソッ!
コロナウィルスの発見報告から約1年が過ぎると言うのに、Covid-19は相変わらず世界中で猛威を振るい続け、被害が大きいミラノに住む私は色々な制限や不自由さに直面し、と同時に休暇のようにゆっくりと自宅で過ごしたわけで、それは快適であったにも関わらず行先不安な不気味な1年でもあったわけです。

EUという統合を図ったヨーロッパ諸国は、約20年前にユーロという貨幣を導入して一般市民にEU加盟が発足したという実感を生活上にもたらしました。そして加盟国は増え続け、今や27カ国に達しています。民族、言語、習慣、文化の違いを乗り越えて、27の国々が仲良くなんとまぁ一緒に歩んでいけるものなのかしらンと感心してしまいます。が、実際はかなりの困難と問題があるのは間違いなくて、けれども問題の多さのあまりに淘汰されてしまっているらしくEU統合が続いている秘訣はもしかしたら、正に民族、言語、習慣、文化の違いから生まれる複雑さの多さにあるのかもしれません。


ところで、Covid-19に対する政策はEUで歩調を合わせる余裕も無く各諸国はウィルスに振り回されっぱなし。Covid-19の到来でパニックしていたイタリアとの国境を容赦なく閉ざした隣国もありましたし、今後このCovid-19がEU諸国の関係にどんな影響を与えるのでしょうか。仲直りしたりして仲良くやっていけるのでしょうか。


イタリア政府がとった第2波用の措置は一般市民には不可解極まりなく、市民は呆れ果ててしまって暴動を起こす力さえも無くなってしまったようす。 イタリアの12月は数々の祭日、祝日に溢れる1年の中で1番大事な月であるのですが、加えてミラノは12月7日にミラノの守護聖人の祭日もあり、その日はミラノだけの祝日となります。その日はスカラ座のシーズンオープニング公演が行われるのが長年にわたる重要行事となっていて、そのチケットも重要イベントであることがうかがえるお値段で、1番高い席は30万円くらいしてしまいます。この通り1年の中で1番大事な文化行事なのでイタリア大統領も出席しますが、ミラノ市長は勿論、政治家、VIP有名人で溢れる華やかな夜会となります。普段はオペラに全く興味が無い有名スポーツ選手なども、オペラ上演をにこやかに鑑賞する日でもあります。
ところが文化活動はCovid-19の影響を受けて中止。スカラ座のオープニング公演も開幕を断念。無観客の公演状況をストリーミング放映するとか。

ところで、舞台に出る前に言い合いっこするおまじないの言葉「Merda Merda Merda(クソ、クソ、クソ)」は、私がヨーロッパに来てから「そう言うものなんだよ」と教えられ由来も知らず無邪気に「クソッ!クソッ!クソッ!」と面白がってコンサート前に叫んでいたのですが、最近になってから根源を知りました。

それは1800年代、劇場に行くために馬車に乗った時代の話で、劇場の前に馬車が到着し沢山の馬車が乗りつければ乗りつけるほど沢山の馬車馬が糞をするので、客入りが良ければ良いほど糞が積もるという事になり「糞がいっぱいだ!」と言う意味の「Merda Merda Merda」という言い方が生まれたそうです。

今年のスカラ座のシーズンオープニングには劇場前に糞は積もることはないような年だけれど、コロナウィルスがイタリア中に見えない嫌な糞をいっぱい落としている。


特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地にソロとアンサンブルの演奏活動中。クラシックからポップスまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、イタリアの人気コメディアンの番組にバンド出演中。

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