• 2024.02.09
  • ブログ リグーリア‐キリスト降誕の再現模型はクリスマスのアートのみにあらず
リグーリア州には、みんなが大切にしている陶芸品があります。
クリスマス期間中はもちろん、それ以外の時期にもキリスト降誕の場面を再現した多くの模型が飾られ、中には一年を通して常設されているものもあります。
リグーリア州で最も知られているキリスト降誕の再現模型は、「マカチ(macachi)」という陶製の人形を使って作られたものです。

マカチは、キリストの降誕に登場する人物をかたどって作られた、12㎝ぐらいの陶人形のこと。
この人形が作られるようになる以前、リグーリア州にはすでに数百年にもわたってキリスト降誕を再現する風習があり、その起源は16世紀にまで遡ります。当時の人々は、木彫りの彫像を使って本格的かつ大掛かりなアート作品として降誕の場面を再現していました。当然ながら、顧客は貴族や聖職者、名士や裕福な商人たちでした。18世紀になるとこうした像は重要性を失っていき、その後、ナポレオンの勅令によってこれらの聖なる表現は禁止されてしまいます。こうした歴史背景の中、何世紀にもわたってこの街の誇りであった陶磁器製造と並んで、テラコッタ(素焼きの陶器)を皮切りにキリスト降誕を再現した人形の製作が再び始まったのです。
職人たちによるこの小さな革命は、とりわけサヴォーナ県で爆発的な広がりを見せました。その作り手は女性、つまり工場で働く人々の母親や妻、娘たちでした。彼女たちは、花器などのテラコッタ製品の製造過程で出る廃棄物を使って、キリスト降誕の場面の人形を作っていたのです。
最初の頃の素朴な人形は、小さなドット(点)で目や口を表現しており、熟練した陶芸家からは「マカチ(サル)」と軽蔑的に呼ばれていましたが、斬新さとオリジナリティによって人気を博していきました。
もともとのマカチは、聖家族(イエス、聖母マリアと養父ヨセフ)や贈り物を運ぶ善良な羊飼いなど25のキャラクターを再現しており、そのどれもがこの地方を代表する古代工芸品になっています。


マカチ

ジェノヴァからほど近いサヴォーナ県には、常に展示してあるものの12月と1月だけしか公開されない、美しい降誕像が存在します。
25体のマカチが、その他の人形とともにキリスト降誕の場面を再現しています。19世紀初頭のアルビソーラ・スぺリオーレの風景を忠実に再現した130平方メートルにも及ぶ降誕シーンに、テラコッタ製や機械仕掛けの人形が命を吹き込んでいます。
キリスト降誕の場面はベニヤ板や砂、コンクリート、スレートで作られ、人形は農民や陶芸家、木こり、漁師、鍛冶屋、オリーブを摘む人、それに陶芸職人の営み、すなわちリグーリア地方ならではの工芸と美術を表現しているのです。
この降誕シーンを再現したオブジェには、夜も訪れます。夕暮れとともに街の灯りが点り、家も照らされて夜には星も姿を見せます。


夜の様子


昼の眺め

職人たち(動く人形)は夜には仕事を中断し、雄鶏の鳴き声が聞こえて明るくなる頃にまた活動を始めます。
後方にはクレープ紙で作った山があり、降りしきる雪が趣を添えています。
ほかにも、リグーリア地方中で様々な降誕シーンを再現した作品が見られます。伝統衣装をまとった等身大の木彫りの人形や木や石を削って作ったもの、さらには本当の役者や動物が登場するものまであります。
リグーリアでは、12月から1月の間に家族で少なくとも1か所の再現展示を見に行くことが習慣となっています。祝祭のお楽しみであり、宗教やスピリチュアリティについて考える大切なひとときであると考えられているのです。
通常、降誕の場面の再現は地域内の学校や教会、そして協会が企画します。どこも入場は無料ですが、寄付を受け付けています。集まった寄付金は各種の慈善事業に使われたり、翌年のイベントの開催費用に充てられたりします。
大抵はボランティアの人たちが近くにいて、展示してある降誕の再現模型に関する質問に答えたり、人形の販売をしたりしています。
たまに、募金を集めるために、ホットチョコレートや自家製のクッキー売る屋台を出していることもあります。


木の板に衣装を着せた降誕場面の再現

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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