これは、第一波のコロナ禍の際に生じた事態を受けて地元当局が取った思い切った判断ですが、国内ではかなりの不満が生じています。
オーストラリア政府としては、大半の住民がワクチン接種を済ませるまで、地域の感染者数を抑えるためにコロナ感染防止策を講じる方針です。オーストラリア国民のワクチン接種率は13%未満と先進国では最低の数字で(執筆時点)、さらにワクチンの供給量も限られているため、目標とする接種率に到達するにはまだまだ時間がかかるでしょう。アストラゼネカのワクチンを接種した人のうちごく少数に血栓症が見られるというニュースのせいで同社のワクチンを打ちたがらない人が多く、一方ではファイザー製ワクチンは供給量が非常に少ないという状況になっています。
こんな状況の中、必死に頑張ってきたのにロックダウンに逆戻りなんて納得できるわけない、と感じる人は少なくありません。
デルタ変異株による新規感染者数が全国的に増えつつある中、ここシドニーでは約15,000人が街頭に繰り出し、新たなロックダウンに抗議するデモを行いました。
シドニーばかりかメルボルン、強制封鎖の対象ですらないブリスベンでも無許可のデモが行われ、一部では暴力沙汰もありました。
中でもひどかったのはシドニーで、ほとんどはノーマスクのデモ参加者が大挙して警察隊と衝突し、馬に乗って駆け付けた警官にペットボトルや植木鉢を投げつける騒ぎになりました。気の毒なのは、この暴動で殴られる被害に遭った馬です。
状況は緊迫していて、オーストラリアでも特にシドニーの住民は、彼らが言うところの「無意味なロックダウン」に嫌気がさし始めています。
国内1日当たりの感染者数は実はまだ少数なのに、2人に1人はステイホームを余儀なくされ、さらに多くの人が移動制限と感染予防対策としてマスク着用を義務付けられているのが現状です。
2年近く前から世界中を苦しめているパンデミック下で、州境の封鎖と、海外からの入国者にはホテル滞在の強制という2つの対策にもっぱら頼ってきたオーストラリアも、インドで最初に確認された感染力の強いデルタ株を抑え込むのには苦労しています。
新型コロナウイルスワクチン接種を終えた人は、オーストラリア人のわずか11%ほど。「豊かな国」で人口もかなり少ないのに、国内のワクチン接種キャンペーンが進まないことについて、多くの人が不満を抱いています。
ワクチンの接種が遅れすぎて、いいかげんワクチンを求めて動かないことには国の封鎖は解除されず、州をまたぐ移動も、さらに言うなら海外旅行もおあずけのまま、平和なこの国の路上で暴動ばかりが増えはしまいかと、私の知り合いは皆そう危惧しています。
たとえワクチンの値段が高くても、ファイザーよりアストラゼネカ偏重でやってきたのだとしても、政府は一刻も早く国民のワクチン接種を進めるべきです。
人口密度の高さゆえ、コロナ禍のダメージが国内最大となっているシドニーでは、ここ数週間、新たな感染者の発生が多数報告されています。今回のロックダウンは9月まで続く見込みです。食料の買い出しや運動、受診などを除いて、シドニーでは不要不急の用事以外で家から出ることもできません。「ノーマルな日常」を取り戻しつつあるヨーロッパやアメリカのニュースを見るにつけ、準備できる時間なら十分あったはずなのに!と、私たちはますますやりきれなくなっています。
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