文字どおり、きわめて多文化・多民族の国ですから、信仰の対象となる宗教も星の数ほど存在しています。
私も最初のうちは、民族や宗教を共有するコミュニティから切り離されたところで祝うクリスマスなんて、言ってみればどっちつかずの大量消費主義的なものであり、純粋なキリスト教としての意味合いは失われていると思ったものです。
この国で「キリスト降誕」の再現を見かけることは、まずないと言っていいでしょう。
公立の学校でも、宗教的にクリスマスを祝うことはありません。子どもたちはクリスマスとは「与える日」であることを学び、宗教的な教育についてはそれぞれの家庭に一任されています。
オーストラリアでのクリスマス休暇は学年末に重なりますが、12月はこちらでは夏本番。
12月1日ともなればオーストラリア人はさっさと脳内のスイッチをオフにして、それぞれの休暇の予定を立て始めます。その様子ときたら、7月終わり頃のイタリア人にそっくりです。目の前のことはすべて翌年に持ち越し、新たな1年あるいは学年を迎えるにあたって誰もが新年の抱負を立てます。
職場の同僚とのクリスマス・パーティも、この時期の伝統的行事です。それはまあ良いのですが、何であれ早めの計画にこだわるオーストラリア人なので、クリスマス休暇について考え出すのはなんと9月末。9月になるとオフィスのクリスマス・パーティの招待状が届き始めるということは、クリスマスの2か月も前から、グリーティング・カードが行き来していることになりますね!
アングロサクソン発祥の伝統で私が大好きなのは「シークレット・サンタ」と呼ばれるプレゼント交換です。クリスマスプレゼントに多大な出費をする必要がない、なんともすばらしい方法です。家族や友人と一緒にパーティに参加するときに、ラッピングをした秘密のプレゼントをひとつ持参し、ゲスト同士でランダムに交換します。この方法なら、その場にいる全員がそれぞれプレゼントを受け取ることができます。一般的には、あらかじめ決められた金額相当の性別を問わないプレゼントを持っていくのがルールです。
今年はイタリアで家族と一緒にクリスマスを祝う予定なんですが、実を言えば、小エビのグリルや魚を使った前菜、それに数種類のデザートが出てくる、典型的なオーストラリアのクリスマス料理が大好きなんです。
クリスマスの代表的なデザートのひとつ、プラム・プディングは、イギリス生まれのお菓子。いわゆるフルーツケーキの一種で、中に入れる果物やナッツは作り手によって変わります。
パブロヴァもオーストラリアならではのお菓子で、大きな型で焼いたメレンゲにクリームやフルーツを添えたもの。ザクロのタネがよく合います。砂糖を加えた卵白を泡立て、オーブンで焼き上げます。
サンタは橇に乗って来るのかって? サンタもここオーストラリアではトナカイの助けを借りられません。ここはトナカイには暑すぎますからね。そのかわり、「ブーマー」と呼ばれる6頭の白い大人のオスのカンガルーがサンタのお手伝いをして、オーストラリアの上空で橇を引いてくれるそうですよ。
クリスマス当日には家族や友達同士で集まって、みんなで海辺に出かけて泳いだり、「バービー」ことBBQを楽しんだりします。
最近では、寒い季節に「7月のクリスマス」をエンジョイするオージーたちもいます。真偽のほどは定かではありませんが、この習慣はシドニーからはおよそ百キロも離れた場所にある、登山客や観光客に1年中大人気のブルー・マウンテンズが発祥なのだとか。そこでは7月に、本格的な冬のクリスマスを祝う「ジュライ・フェスティバル」というお祭りが開かれています。
ブルー・マウンテンズの中心街・カトゥーンバでは、ホテルやレストランにまるでクリスマスシーズンのようなデコレーションが施されます。降り積もる雪が、いっそう雰囲気を盛り上げています。七面鳥や雄鶏の他、北半球では冬に食べるありとあらゆる高カロリーな食材を並べたクリスマス式ランチメニューを出すレストランまであるようです。
何はともあれ皆さん、ハッピー・ホリデー!
写真は、クリスマス・プディングと小エビのバーベキュー