この街の歴史は、1778年にアングロ・サクソン人のアーサー・フィリップがこの地に監獄を作り流刑地にしたことから始まります。長らく収容所として使われる時期が続きましたが、徐々にイギリスとアイルランドから多くの移民が上陸する場所になっていきました。
東に大西洋、西にブルーマウンテンを望むシドニーは、その広大さとは裏腹に人間が住みやすい、もっと言えば観光客にも優しい都市です。実際、近代的でよく整備されていることに加え、人々の好奇心を刺激する魅力やスポットが目白押し。街の各所に地下鉄やバスが通っているので、どこにでも簡単に行くことができます。
我々イタリア人がオーストラリアに行くためには、21時間から22時間も飛行機に乗る必要がありますが、いったん到着すれば、その選択を後悔することはないでしょう。これはホントの話ですが、シドニー市内だけでもトライすべきアクティビティや体験が盛りだくさん! 私もここに住んで働くようになってから数年経ち、この街を広範囲にわたり探索してきましたが、常に新しい発見に出会うのです。
その土地を知る最良の方法は、足で歩いてみること。これはいつでも確信を持って言えることです。とくにシドニーなら帰りに乗り込めるバスや地下鉄の駅が至るところにあるので、距離のある場所だからといって躊躇する必要はありません!
市内だけでなく、この街を取り囲む素晴らしい海岸を歩いてみるのも、個人的には超おススメです。長々と続くビーチと緑地帯がかわるがわる現れ、壮大な崖からは海を一望できるのですから、これを見逃す手はないでしょう。
シドニー市内で私のお気に入りのエリアはバランガルーです。大恐慌時代にはセメントの倉庫が並ぶ貨物用の港でしたが、再開発を経て今では最もホットとされるスポットになり、実に大きな変化を遂げた場所です。新たな変革が進行中のバランガルーは、歩行者や家族連れを惹きつける、シドニーでもとくにトレンディな地域になりつつあります。
バランガルーの変貌は一大プロジェクトによるもので、2024年に完成した暁には、湾に沿って走る2kmの遊歩道、新しい公園や広場のほか、ダーリングハーバーの対岸にある既存のものとは別の新たなカジノ、そしてマンションやオフィス、レストラン、カフェや店舗がたくさん誕生することになります。要するに、全てが完成したら、バランガルーはシドニーでも最高のエリアになるということです。
もうひとつ、地元でも知る人ぞ知る、文字どおり宝石のような名所といえば、エンジェルプレイスに設置された無数の鳥かごでしょう。シドニーの細い路地にあるのですが、きわめて深いメッセージを秘めたインスタレーション作品によって絵のように美しいスポットとなっています。
この通りに来て上方を見上げ耳を澄ますと、50種類ほどの鳥のさえずりを聞くことができます。空っぽの鳥かごの下を歩くと、鳥かごから再現された鳥の声が流れる仕組みです。「Forgotten Song(忘れられた歌)」と名付けられたこの作品は、シドニーの動物相の進化と進みゆく都市化への適応、そしてその結果、生存のためにこの街を離れざるを得ず、シドニーから失われてしまった多くの鳥類を表現しています。山火事、干ばつ、生息場所の喪失などにより、毎年多数の動物が失われているこの国で、このメッセージは悲しくも重大な意味があるのです。
シドニーは私が訪れてきた中でもとくに素晴らしい都市のひとつだし、誰もが人生で一度は行ってみるべき場所だと思っています。
シドニーの歩行者天国